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目標はある、道がない。道と名づけられるのは、ためらいだ。

目標はある、道がない。道と名づけられるのは、ためらいだ。

高橋悠治「カフカ / 夜の時間」p21「病気・カフカ・音楽」

 

目標があるのに、そこにいたる道はない。
道を進んでいると思っているが、
実際には尻込みをしているのだ。

頭木弘樹編訳「絶望名人カフカの人生論」p34「6 目標に到達する難しさ」

この2つ、原文は同じと思われます。「絶望名人…」によると、出展はカフカ「罪、苦悩、希望、真実の道についての考察」。
「絶望名人…」はわかりやすくするために、「超訳」的なことが少し行われているようです。
それに対して「カフカ / 夜の時間」の訳 (高橋悠治自身による) は詩に近い。

ここで翻訳についてあれこれ言いたいのではありません。
目標と道についてです。
目標は立ったのにそこにたどり着けない、ということもあるでしょう。
進んでいるつもりなのに全然動いていなかった、ということも。
それでも、動こうとしているのは確か。例えためらいがあったとしても、ためらうのは動こうとしているからこそではないでしょうか。
ためらいが先に立って進めないときでも、「動こうとしているからためらうのだ」と、動こうとしていることを実感できればいいと思います。

 

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疲れるだろ そうゆうのも

疲れるだろ そうゆうのも
どうせ 死ぬまで 生きる
気楽に やれ
気取るな
「コミックキュー VOL.2 1996」収録 松本大洋「ドラえもん」老人のび太の台詞

この言葉は、1996年に発行された雑誌「コミックキュー」に掲載されました。
雑誌のテーマは「カバー・バージョン」。まんが家たちが過去の名作まんがをカバーする、という趣旨のもの。
松本大洋は「ドラえもん」のカバーで巻頭カラーを飾りました。
異色の短編ですが、松本大洋作品ではこれが一番好きです。単行本未収録だと思います。

ストーリーは、冬の公園で青年のび太が少年のび太と老人のび太と出会う、というもの。
青年のび太は苦悩する青年として描かれています。
老人のび太が青年のび太に語ったのが冒頭の言葉です。

「どうせ死ぬまで生きる」

あまりにも当たり前の言葉です。当たり前すぎて、普段全く意識することのない言葉でしょう。
でも、あまりにも当たり前であるがゆえに、とても大事な言葉だと思うのです。
自分がいつ死ぬかなんてわからない。わからないけど、でもそのときまでは自分は生きている。
生きている時間は限られているのだから、無駄なことをしている暇はない。確かにその通り。
しかし時間が限られているからこそ、焦っても仕方ない、というのもまた真理だと思います。
生きている時間は、限られてはいるけど確実に存在する。

「どうせ死ぬまで生きる」んだ、と、一息ついて空を見たり、くだらないことで笑ったりする時間は絶対必要だと思うのです。

 

コミック・キュー (Vol.2(1996))
江口 寿史
イースト・プレス

 

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