科学は身近なものだから〜おはようからおやすみまでの科学

「子供を理科好きにしたければ、家の手伝いをどんどんさせればいい」とは、昔新聞で読んだ作家の言葉です。
この本にも「台所は『科学』の宝庫」という言葉が出てきます。

タイトルの通り、生活にかかわる科学技術の解説と、科学とどうかかわっていくかを書いた本です。
前半は科学によって生活が便利になっていった歴史、人と科学との係わりの変化、身近な製品がどのように作られているかの解説中心です。
その中に手作り味噌の話でてきます。
味噌を手作りするようになって、便利さをお金で買い、それを享受するだけでなく、多くの行程を自分の手で行うことも創造的で楽しいことだと実感した、という話が中心です。
ここでちょっと引っかかりました。
確かに「多くの行程を自分の手で行うことも創造的で楽しいこと」だと思います。しかし楽しいと思えるのは、自分(たち)が「便利な生活」を享受しているからこそではないか、という気がしたのです。
いわば「いつでもやめられる(既製品を使う便利な生活に戻れる)からこそ楽しい」気がしてならない。
これが「手作りするしかない、手作りしないと使えない」生活だったら、そもそも楽しいと思う余裕が生まれないかもしれないでは。
身近な製品の解説では、冷凍食品の作り方が面白かった。「凍る」というメカニズムそのものは知っていましたが、具体的な冷凍食品がどう作られているかまでは知りませんでした。冷凍ピラフの作り方にはびっくり!!

科学的にものを見ることの必要性を説いた本で、今年は「科学的とはどういう意味か」も読んでいます。
「科学的とはどういう意味か」は、科学的にものを見るとはどういうことかをひたすら説いた本で、「科学的であること」を啓蒙する本としては、正直「理系」の人以外にはとっつきにくいところがある。
この本は全体的に平易な書き方がしてあります。ちくまプリマー新書はそもそも若年層を主な対象にしたシリーズだし。やや物足りなく感じるところもありますが、その分取っつきやすい、身近な科学に触れるきっかけにはなりやすいと思います。
しかし、この2冊の差は内容や読者対象・書き方ではなく、出版された時期の差が結構大きい気がします。
本の持つ「深刻度」みたいなものの差は、そこによる気がする。
「おはようからおやすみまでの科学」が出版されたのは2006年6月、「科学的とはどういう意味か」は2011年6月。
もし今「おはようからおやすみまでの科学」が新刊として出版されるとしたらどういう内容になっているか。個人的に興味があります。

「科学的にものを見、考えること」の必要性は、いつの時代になっても変わらないでしょう。科学的でないがゆえに損をしたりリスクを背負うことはこれまでもずっとそうでした。今後はますますそれが必要になり、背負うリスクだって半端なものではなくなるかもしれない。
それでも、科学は敬遠されてしまう。残念なことです。

 

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