月: 2016年12月
2016年に出会った、忘れたくない言葉
今年も様々なメディアを通して、気になる言葉に出会いました。
その中で、特に「忘れたくないな」と思ったものをご紹介します。
人生は泣く日笑う日ごみ出す日
毎日新聞 2016年2月12日「仲畑流・万能川柳」
思わず笑っちゃいましたが、真実をついた句だと思います。
生きていれば物理的にも精神的にも大量のごみが発生するけど、それはちゃんと出していかないとね。
「ごみはまめに拾い、まめに捨てる」は鉄則ですな。
情けない自分ていうのをどっかで笑えないと生きていけないところありますよね
強くいなくちゃいけない 偉くなくちゃいけない しっかりしてなくちゃいけない 自分は間違わないっていう人って
うざい枝元なほみ
NHK SWITCHインタビュー 達人達「枝元なほみ×高野秀行」
今年は「天中殺か」というくらい、困難が降りかかってきた1年でした。それもあって心身共にに苛まれる時間が多かったのですが、枝元なほみのこの言葉を聞いて、気が楽になりました。
「強くいなくちゃいけない 偉くなくちゃいけない しっかりしてなくちゃいけない 自分は間違わない 」って考えて、余計辛くなっていたことに気づいたから。
「役に立つのか?」
映画「ブリッジ・オブ・スパイ」
映画の中で、逮捕されたソビエトのスパイ(マーク=ライランス)が彼を担当する弁護士(トム=ハンクス)に「不安は?」と問いかけられて発した言葉です。
わたし個人は「それは役に立つのか?」という問いはあまり好きじゃありませんが、このやりとりには納得しました。
不安に苛まれた時にこれを思い出し、気持ちを落ち着ける事ができたのは確かです。
やっぱりみんな欠点ってありますやん
それを突っついとったってしゃあないですやんNHK ドキュメント72時間 2016年2月19日放送 「大阪・天神橋筋 商店街のベンチにて」
覚醒剤でつかまった友人を支える男性
天神橋筋商店街の端にあるベンチに、覚醒剤で逮捕歴がある友人と共に座っていた男性の言葉です。男性は刑を終えて出所した友人を支えています。
確かに誰にでも欠点はあるし、それを突いて何かが良くなるかというと、そんなことはない。
他人を突っつく労力があるなら、もっと実のあることに使いたいですね。
大事なのは「落ち込まない意志」ではありません。落ち込みを回避する儀式などの、「創意工夫」です。
4月9日 朝日新聞be「悩みのるつぼ」岡田斗司夫の回答から
「創意工夫」は、生きていく上で「努力」とか「がんばる」より重要ですね。人生のエネルギーは限られているから、それを精神的なことでどうにかするんじゃなくて、具体的な行動などにした方が効率的で自分にも優しいんじゃないか、と。
ここ数年、そんなことを考えるようになりました。
明日も、今日みたいにいい日になりますように。自分に残された日々がうんざりするほど長いのか、驚くほど短いのかは誰にも分からないけれど、いい日が1日でも多くありますように。自分や自分のまわりの人たちが、怖い思いやみじめな思いをしませんように。そのためにできそうなことがあれば、がんばります。無理のない範囲で。
メレ山メレ子「メメントモリ・ジャーニー」
p259「孤独を乗りこなす力、ささやかなお祈り」
自分の人生も、後半戦に入りました。本当に無理をせず、いい日がちょっとでも多くなるように生きて行けたらいいな。
来年も、たくさんの言葉に出会えますように。
2016年「使ってよかった」と思ったもの
今年新たに使い出したもので、「よかったな」と思ったものをご紹介します。
無印良品「体にフィットするソファ」
家族だけでなく、ゲストにも好評です。
座り心地がよく、姿勢に合わせて変形できて、持ち運べるので掃除も楽。リビングの古いソファをこれに換えたのですが、正解でした。
2つくっつけて並べると、わたしはそのまま上に横になれます。なのでその状態で昼寝することも。
体にフィットするソファ・本体 幅65×奥行65×高さ43cm | 無印良品ネットストア
ロール型付箋紙
異動先で前任者がそのまま机に残していった物です。気がついたらこればっかり使ってました。
主に案件の進捗状況やtodoの記録に使っています。例えば「A社の返答待ち」とか「○○を改訂して部長承認をもらう」とか書いてファイルの表紙に貼ってます。
普通の付箋紙のようにひらひらしないので、ファイルの表紙にも気にせず貼れるのがいい。
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Brilliant more
歯科医院で勧められた歯磨き粉。わたしは歯に着色汚れがつきやすいのですが、これを使い出して悩みがほぼなくなりました。
ちなみに歯石取りの最中にこれを勧められました。
歯科医が歯石を削りながら
今度うちで扱いだした歯磨き粉ね、着色汚れがよく取れていいよ
汚れを浮かせて落とすから、研磨剤で削るのより優しいし
着色汚れを取る歯磨き粉、1000円のやつと2000円のやつを自分で試したんだけどさ
やっぱり2000円の方が汚れがよく落ちるんだよ
だけどさ、俺は歯磨き粉に2000円はよう払わん、と思ってさ
1000円のを扱うことにしたんだよ
気になったら使って感想教えて
と言いました。当然まともな返答はできませんでした
2000円の歯磨き粉がどんなものかは不明ですが、これはよかった。ちゃんと歯科医にも報告しました
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珪藻土バスマットを水切り籠の受け皿として使う
洗った食器を置く水切り籠を新しくしたのですが、専用のトレーを使わず珪藻土のバスマットを下に敷きました。
なぜかというと、専用トレイでは自分が望む方向に水を流せなかったから。そこで悩むくらいなら、いっそ流さないようにしよう、と考えたのです。
最初の数日だけ珪藻土独特のにおいが気になりましたが、現在では快適に使ってます。食器を片付けたあとにまな板スタンドに立てて乾燥させています。
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2016年も、たくさん映画を見たので
今年は昨日までに27本の映画を見ました。2015年は25本でした。ずいぶん見たもんですね。
その中で特に印象的だったものをご紹介します。
ヤクザと憲法
映画『ヤクザと憲法』公式サイト
平日昼間に行ったのに、名古屋シネマテークは補助椅子を全部出した上に立ち見まで出ていました。定員の倍はいたんじゃなかろうか。
しかも普段映画なんか見ないであろう雰囲気な人が多かった。
わたしはヤクザは嫌いだし、世の中からいなくなった方がいいと思っています。しかし彼らには彼らの言い分もあるわけで。
映画の中のヤクザは、自分が持っていたイメージとは違う面が多かったように感じます。一番印象的だったのは高校卒業後すぐにこの世界に飛び込んだ、組の一番下である20歳前後の男性。ヤクザの世界に入ったこと、この世界で生きていくことに対する迷いのなさが強烈でした。
帰ってきたヒトラー
原作を読んだあと、こんなツイートをしました。Twitter文学賞に投票した時のものです。
Twitter文学賞海外部門。ティムール=ヴェルメシュ著・森内薫訳「帰ってきたヒトラー」河出書房新社。2014年これに勝る衝撃はなかった #wtb5 #fb
— 小波(sazanami) (@sazanami_jp) 2015年2月4日
映画に関しても、全く同じことを言えます。2016年これに勝る衝撃はなかった。
なによりこれだけリアルに、小説の持つおかしさや不気味さを表現できたとは。一部ドキュメンタリーであるからこそのリアルさですね。映画内での原作本の使い方も、「こうきたか」とニヤリとするものでした。
ヒトラー役の俳優は特殊メイクであの顔になりましたが、単なる「似ている人」じゃないんですよね。ヒトラー本人も、こんな感じだったんだろうと納得させられてしまいました。
映画と小説ではラストが違っています。しかし、最後の最後で「んなバカな」という衝撃を受けた点は同じ。
「帰ってきたヒトラー」は、小説と映画両方見るべき。小説の世界をこれだけ上手に映像にした作品は、そうはないと思います。
キャロル
映画『キャロル』公式サイト
実に美しい恋愛映画だった。「女性同士の恋愛」を扱った作品で、上映前から話題になっていましたが、女性同士であることは、途中からどうでもいいことに思えました。映像も音楽も、何もかもが美しい。
父を探して
映画『父を探して』公式ホームページ
手描きとパターン展開を多用した、楽しい映像と楽しくないストーリー展開が印象的でした。終盤の主人公の少年の変化に驚き。
CGによるリアルなアニメーションばかりになった今、手描きのタッチはとても鮮烈でした。
今年はついに、スターキャットシネクラブの会員になってしまいました。
せっかくなので、来年も見たい作品はできるだけ見に行きます。
今年読んで、強く印象に残った本 #mybooks2016
今年は昨日までに63冊の本を読みました。
その中から特に印象的だったものをご紹介します。
温又柔『台湾生まれ 日本語育ち』
「自分自身」「ことば」「国」の関わりについて、全く新しい視点で綴られた本。
自分の生まれた国で育ち暮らし、自分の国の言葉だけを話す生活をしていると、この3つは直接結びついているものと考えがちですが、それは当たり前じゃない。
ことばと人との関わりは、本当はもっと複雑ですごいものなんだと実感させられました。まさに「蒙を啓かれた」という感じです。
米原万里『米原万里ベストエッセイ(I)(II)』
池澤夏樹がIの解説に「つくづくこの人にはかなわないと思う」と書いていましたが、全く同感です。
彼女のエッセイをまともに読んだのは初めてですが、確かにこれだけ毒舌や下ネタを出しても下品にならず、知性あふれる痛快なエッセイを書ける人にはかなわない。
彼女の文章、もっと読んでみようと思います。
KADOKAWA/角川学芸出版 (2016-04-23)
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モリー=グプティル=マニング『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』
本の持つ力を、強くストレートに実感させてくれました。
第二次大戦中、アメリカ軍は前線の兵士たちに1億4000万冊もの本を送ったそうです。「兵隊文庫」と呼ばれたその本たちを兵士たちはとても大事にし、時間さえあればむさぼるように読んだそうです。
悲惨な戦闘の中でも、兵士たちは本を読むことで「自分は人間である」という実感を取り戻していたのです。
そして本を読むことを覚えた兵士たちは、復員後に大学に通うなどして教養や職を得るようになったそうです。兵隊文庫は、市民の教養の底上げにもつながりました。
訳者あとがきには
本は武器であるという言葉は、決しておおげさな言葉ではないと思う。ヒトラーは無類の読書家だったそうだ。おそらく彼は、本の力をよく知っていたのだろう。だからこそ、一億冊もの本を燃やしたのではないか。そして、アメリカの図書館員や戦時図書審議会構成員もまた、本の力を知っていた。だからこそ、一億四千万冊もの本を戦場へ送ったのである。
とあります。
本の力を知っている両者が、正反対の行動に出たというのが非常に興味深い。
東京創元社
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チママンダ=ンゴズィ=アディーチェ『アメリカーナ』
2段組で500ページ以上ある小説ですが、読み出したら止まらない。
恋愛がベースでありながら、全体を通してアメリカ社会への批評が展開されます。
アメリカ社会で移民・女性・黒人が生きるとはどういうことか、アフリカからアメリカに渡った人と、アフリカに残った人との間にあるものとは。
主人公のイフェメルが、アメリカに来て、初めて自分が黒人であることを発見したという箇所が衝撃でした。
まずラブストーリーにどっぷりはまり、そしてアディーチェの社会批評の鋭さに驚嘆する。
アメリカは移民社会と言われるけど、だからこそ抱える複雑さがあるのですね。
河出書房新社
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来年も、いい本にたくさん出会えますように。