月: 2012年8月
目標はある、道がない。道と名づけられるのは、ためらいだ。
目標はある、道がない。道と名づけられるのは、ためらいだ。
高橋悠治「カフカ / 夜の時間」p21「病気・カフカ・音楽」
目標があるのに、そこにいたる道はない。
道を進んでいると思っているが、
実際には尻込みをしているのだ。頭木弘樹編訳「絶望名人カフカの人生論」p34「6 目標に到達する難しさ」
この2つ、原文は同じと思われます。「絶望名人…」によると、出展はカフカ「罪、苦悩、希望、真実の道についての考察」。
「絶望名人…」はわかりやすくするために、「超訳」的なことが少し行われているようです。
それに対して「カフカ / 夜の時間」の訳 (高橋悠治自身による) は詩に近い。
ここで翻訳についてあれこれ言いたいのではありません。
目標と道についてです。
目標は立ったのにそこにたどり着けない、ということもあるでしょう。
進んでいるつもりなのに全然動いていなかった、ということも。
それでも、動こうとしているのは確か。例えためらいがあったとしても、ためらうのは動こうとしているからこそではないでしょうか。
ためらいが先に立って進めないときでも、「動こうとしているからためらうのだ」と、動こうとしていることを実感できればいいと思います。
みすず書房
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《気になる》バングルランゲージ
CBCで土曜朝に放送している情報番組「知っとこ (毎日放送制作)」。先週ここで「旅先で便利なグッズ」として紹介されていました。
旅先で役立つピクトグラム11種類を描いたバングル。言葉が通じなくても指さすだけでコミュニケーションがとれる、というわけです。
今はスマートフォンで翻訳もかなりできるようになっていますが、こういうアナログなグッズもあると、いざというときに助かるかもなぁ、と思いました。なんといっても指さすだけ、腕につけておけるから会話集のようにいちいち取り出す必要もない。病院とかお手洗いなど急を要することも多い場面では楽でしょうね。
書かれているピクトグラムは
インフォメーション・電話・病院・お手洗い・両替・レストラン・荷物・ロッカー・インターネット・駅・空港
の11種類です。
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《気になる》サティさんはかわりもの
先日名古屋市立大学で開催された「ビブリオバトル首都決戦予選会(1)」を観戦してきました (ビブリオバトル首都決戦2012についてはこちら)。
ビブリオバトル自体初めてだったのですが、飛び入りで発表もしてしまいました (ただし今回社会人は発表のみでチャンプ本の対象にはならない)。
今回のビブリオバトルでチャンプ本になったのがこの絵本です。
エリック=サティの生涯を、楽しい絵と言葉で綴った本。対象は「子供から大人まで」。
表紙のサティがとても楽しそうな感じがして、読んでみたくなりました。
現在サティの音楽は色々な場所で聞くことができます。しかし音楽家サティがどんな人だったかはほとんど知りません。
彼は相当に変わった人だったようですね。現在では当たり前になった音楽も、彼が生きていたときには相当に斬新なものだったのでしょう。
サティが音楽を担当し、ピカソが衣装を担当したバレエがあったことも初めて知りました。バレエとして上演されることはなく、音楽のみが演奏されるばかりのようですが、バレエも見てみたいです。
《気になる》宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ
宇宙怪人しまりす、ですか。なぜしまりす。出版社名と宇宙怪人しまりすの合わなさ加減がすごい。
内容は至極まじめな医療統計の本だと思いますが。
医療と統計を結びつけて考えたことはありませんでしたが、医師が研究を進めていく上で、データを集め分析し、規則性・不規則性を見出していくことは当然必要になるでしょう。
わたしは医療従事者ではないので、あくまで未知の分野を知る一種のガイドブックとして興味を持ちました。
わたしは高校の頃、確率統計がすごく苦手でした。数学の各分野で、テストの点数が一番低かったorz
未だにこの分野には苦手意識があり、ちょっとした組み合わせ数を求めるのにも悩んでしまいます。
岩波書店
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《気になる》コミック☆星新一
2008年にNHKで「星新一ショートショート」が放送されました。全部で75話あったのですが、実写ドラマありアニメーションあり、アニメも作品ごとにテイストが異なり、毎回とても楽しく見ていました。
テレビ番組よりずっと前に、星新一のショートショートがまんがになっていたんですね。こちらも1話ごとに作画が違い、ストーリーと絵の両方で楽しめそうです。
余談ですがわたしが星新一作品で一番好きなのが「生活維持省」です。ディストピア小説なんですが、読むとどうしようもなく胸が詰まる。「星新一ショートショート」でもアニメ化されていました。「コミック☆星新一 午後の恐竜」にも収録されています。
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BSジャパン「NIKKEI×BS LIVE 7PM 『SF小説の新潮流』」を見た
2012年8月16日放送のBSジャパン「NIKKEI×BS LIVE 7PM 『SF小説の新潮流』」を録画して見ました。
BSジャパン : NIKKEI×BS LIVE 7PM 「SF小説の新潮流」
テーマは「読んだ気になる! 新世紀SF小説」。
大森望さんをゲストに迎え、現在の日本のSF事情が紹介されました。
小松左京・星新一・筒井康隆以降SF自体が下火になっているという話から、
- 実はSFが色々なところに浸透しSFをSFと言わなくなった
- 色々な人がSFを書くようになった
- 「SF=映画」というイメージが強くなり、小説は映画に比べるとどうしても地味なので目立たなくなる
などSFの状況の解説があり、「今SFを読むならこの作家」として、伊藤計劃と円城塔が紹介されました。
小松左京・星新一・筒井康隆から伊藤計劃・円城塔へ、というのは飛びすぎじゃないかと思いましたが、「屍者の帝国」の発売直前でかなり注目が集まっているだろうし (もう発売されていますが、このエントリを書いている時点でAmazonのベストセラーランキングで42位でした)、やはりそういう形になるのでしょう。番組内でも「屍者の帝国」の紹介に結構時間を割いていました。
あとは第146回芥川賞は田中慎也の「もらっといてやる」発言と石原慎太郎とのバトル?が注目されたけれど、実際に芥川賞銓衡委員としての石原慎太郎に引導を渡したのは円城塔である、という話など。
「屍者の帝国」について、山田五郎が「確実に映画化」と言っていました。これは本当にそういう話が進んでいるのか、彼の願望あるいは予測に過ぎないのか。わたしはまだ読んでいませんが、本当に映画化されたら見に行くかもしれない。
その他、番組を見ていて気になったことをいくつか。
- 大森さんの前に何冊かのSF小説が置かれていました。かなり古い洋書と思われるレイ=ブラッドベリやフィリップ=K=ディックなど。あと子供向け全集に入っていたと思われるベリャーエフ (山田五郎が「ベリャーエフとは懐かしい」と言っていました)。すべて大森さんの蔵書と思われます。
- 大森さんが資料閲覧用に持ち込んだのはGALAXY Tabと思われます。番組中に着信がありましたwww
- 出演していた日経新聞の女性記者が、過去の映画の興行成績の紹介以外ではほとんど黙っていたのが気になりました。SFをほとんど知らないからだと思いますが、知らないなりに何か質問すればいいのに、と思いました。
特別目新しい話があったわけではありませんが、古い本 (写ったのを見ただけですが) と最新の本に触れられて、結構楽しかったです。
以下は番組内で紹介された本の一部です。
「SF的作品」として紹介された小説
角川書店(角川グループパブリッシング) (2012-03-28)
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新潮社 (2012-03-28)
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大森望選・2012年上期ベストSF
朝日新聞出版 (2012-07-06)
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角川書店(角川グループパブリッシング)
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早川書房
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《気になる》古事記 いのちと勇気の湧く神話
最近古事記の解説本をよく見かけます。やはり編纂1300年を迎えたからでしょうか。
古事記に出てくる物語は、絵本か何かで読んだり、教科書に出てきたり、あるいは家族から聞いたりしていくつか知っていますが、それらはみんな断片的なものだったりします。
もしかすると、古事記由来と知らない物語もあるかもしれません。
古典に関しては解説書や入門書ではなく、できるだけ原典に当たりたいと思います。あらかじめ誰かが解説・解釈したものよりも、原典の方が楽しみも得られるものも「濃い」と思うから。
そうではあるのですが、この本は古事記をネタにしたエッセイとして、軽く楽しむのによさそうです。
古事記だけでなく旧約聖書も読んでみたいと思います。どちらも歴史や宗教などと離れたところで、壮大な物語として興味があります。
中央公論新社
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《気になる》ディファレンス・エンジン
伊藤計劃の文庫「The Indifference Engine」で、この作品の「解説 (円城塔との合作)」を読みました。
文庫タイトルになっている「The Indifference Engine」は短編小説で (とても怖い小説だと思った)、円城塔のデビュー作のタイトルは「Self-Reference ENGINE (未読)」です。
もう単純に、この3つのタイトルの似た作品の関係を知りたいと思います。しかしSF超初心者の自分にそれがわかるだろうか。
わかるかどうか知るためにも、「ディファレンス・エンジン」と「Self-Reference ENGINE」を読んだ上で「The Indifference Engine」を再読してみようと思います。
早川書房
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《気になる》泣ける話、笑える話—名文見本帖
名文見本帖って、すごいタイトルだなぁ、というのが初見の感想です。
徳岡孝夫の文章は、おそらく読んだことがありません。中野翠も、本などでまとめて読んだことはないかもしれない。
わたしは泣ける話より笑える話に興味があります。小説などを読んで泣いたことは今まで何度もあるけれど、最初から泣こうと思って読むとか泣ける話だから読むことには興味がありません。
名文を読んで、泣いたり笑ったりするのは至福の時間の過ごし方でしょう。新書はそういうひとときにちょうどいいサイズかも。
文藝春秋
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《気になる》Newsweek日本版別冊 時代を刻んだ映画300
わたしは映画をほとんど見ません。1年間1本も見ないことも珍しくありません。
今年は「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」と「ヘルタースケルター」を見ました。どちらも原作が先です。映画から原作に入ったものは少ないと思います。
こんな調子なので、ハリウッドが100周年を迎えていることも知りませんでした。
映画も文学も、作られた時代からの影響は必ずどこかで受けているはずですが、映画の方がストレートに時代が出やすいかもしれませんね。
Amazonの「商品の説明」に紹介されている作品は、タイトルだけは知っているものが多いです。見たことがあるのは前出の「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」だけですが。
この雑誌はハリウッドの100年間と歴史を絡めて構成されていて、映画ガイドとしてもさることながら、歴史のテキストとして面白そうだと感じます。