月: 2012年1月
わたしたちは負けない〜音もなく少女は
ボストン=テランという、自分が全く知らなかった作家の作品を読みました。新聞の書評欄で見たのが知ったきっかけなのですが、やはりタイトルが非常に印象に残ったせいだと思います。
ボストン=テランはミステリ作家。しかしこの作品は「ミステリ」だとは思いませんでした。作品を一言で表すとすれば「ある戦いの記録」がふさわしい気がします。
主人公イブを始め登場する女性達に感じ取ったキーワードは「わたしたちは負けない」。
イブにせよ、イブを支えるフラン、そしてその周囲の人にせよ、読み進めるのが辛くなるような、不条理としか言いようのない環境の中、それぞれに自分 (たち) の力で不条理から逃れ進んでいく。悲惨な中でも力を合わせて前に進む姿から思い至りました。
この作品に書かれているベトナム戦争の頃のニューヨーク・ブロンクス。かなり悲惨というか危ない地域として書かれています。ブロンクスは治安の悪い地域として有名ですが、今も当時と同じような状況なのでしょうか。
読み進めるのが辛く感じるところもありましたが、それでも最後にはほっとしたというか、なんだか救われた気がしたのです。読ませる文章で、悲惨だけどなんとかみんな救われてほしい、と思い、読むのをやめたいとは思いませんでした。
登場する女性達の強さ、イブと写真の関わり。読んでよかったと思います。
文藝春秋 (2010-08-04)
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2012年1月16日〜2012年1月22日にチェックした本・モノから
先週チェックした本・モノからいくつかピックアップします。
[MM週間記録1/16-1/22] 登録15件/購入2件/金額1429円/読了1冊
或るろくでなしの死
エキサイトレビューから。レビュー冒頭の
ここらで一発、バーンとあきらめてみませんか? 仕事とか勉強とか自己啓発とか自己実現とか、疲れるじゃないですか。細かいことを考えずに気楽にいきたいですよね。
にグッときたのと、残酷な内容だと読むのに体力がいりそうだけど、でも残酷だからこそ落ちこんだときに読むといい本かもしれない (しかしそういうときは肝心の体力がない気もするけど)、などと思ったのでチェック。
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-12-22)
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システム障害はなぜ二度起きたか——みずほ、12年の教訓
serumisuさんのこのツイートから。
みずほ銀行発足時のシステム障害についてのルポルタージュ「システム障害はなぜ起きたか~みずほの教訓」は発刊時に読みました。そして今回新たなルポが出たのを知ってチェック。
「みずほの教訓」では、特に覇権争い (銀行もSIも) にまつわる内情を読んで「なんだかなぁ」と強く思いましたが、「みずほ、12年の教訓」はどうなんでしょうか。
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私は生まれなおしている—日記とノート 1947-1963
夢の賜物
松丸本舗のこのツイートから。
スーザン=ソンタグは前々から読んでみようと思いつつ、未だに手が出せていません。
せっかくチェックしたので、近いうちに挑戦してみようと思います。
河出書房新社
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購入したのはこの2冊。
「高校生のための文章読本」で「砂の本」をほんの少し読みましたが、なかなか面白そうだったので全文に挑戦します。
集英社 (2011-06-28)
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気楽に読める詩の本が欲しくて購入しました。
読了したのはこの1冊。ラテンアメリカ文学もいろいろ読んでみたくなりました。
集英社 (2011-07-20)
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NO FUTURE, NO CRY!! 再び〜アナーキー・イン・ザ・JP
読むのが少々大変だった小説。主人公シンジの経験と、大杉栄が実際に生きた時代など、様々な時代や場面にあちこち飛んで、それを追いかけるのが大変だったからと思います。
大変な面はあったけど、小説自体は面白かった。現代のパンクス高校生の頭の中に大杉栄がよみがえる、という荒唐無稽と言ってしまえばそれまでかもしれないけど、でもその大杉栄に突き動かされるシンジのむちゃくちゃぶりにひっぱられて楽しく読みました。
シンジの頭の中の大杉栄と学校の世界史教師やシンジの兄が論争する場面が出てきます。これらの論争が個人的読みどころでした。
世界史教師との論争の中で大杉栄のこんなせりふが出てきます。
「〈浅い。いや、実に浅いよ。君はさっき、国を作るとかなんとか言ったね。その国って、いったいどういう意味なんだい? ネーションなのか、ステートなのか、あるいはカントリーか、ランドか、はたまたパトリオットか。はなはだあいまいだねえ〉」
(p83)
これに対する世界史教師の回答は「ネーション・ステート」、近代的な国民国家でした。
「国」と普段何気なく言いますが、その自分が口にした「国」が何を指しているのかまで意識することってない。そもそも自分の中で「国って何か」の定義ができていない。
普通に生活してる分には必要ないことかもしれませんが、例えば新聞などを読むときに「そこに書かれている『国』は何か」を意識して読むのはありかなと思いました。
全体を通して大杉栄の人生が展開されるけど、彼にに関するエピソードがどこまで本当かはわかりません。ヘミングウェイの「われらの時代」を訳したとか、パリでフィッツジェラルドとゼルダに遭遇した話とか。
その辺は「日本脱出記」を読めばわかるでしょうか。これも読んでみたくなりました。
大杉栄という人は、良しにつけ悪しきにつけ非常にスケールの大きい、人を惹きつけるものがある人なんだろうなと思います。シンジの兄と大杉栄の論争するシーンの直前に、これまでに映画や文学で、どれだけ大杉栄が取り上げられてきたかが列挙されていますが、それを見ても思う。
女性関係はだめです、こういう人受け付けない。
東京トンガリキッズにも出てきて、この作品でも叫ばれた「NO FUTURE, NO CRY (未来はないけど、泣いちゃだめだ)」という言葉。NO FUTURE 自体はセックスピストルズの歌詞に出てくる言葉のようです。
「NO FUTURE, NO CRY」、決して明るい言葉ではないけれど、でも心に残って不思議と励まされるのです。
「東京トンガリキッズ」とはかなり雰囲気が違っていたちょっと戸惑いましたが、微妙な湿っぽさとむちゃくちゃぶりが、そして登場人物のモデル探し (評論家とかアイドルとか政治家とか。実在の人物がそのまま出てるところもあった) が楽しかったです。
余談
日蔭茶屋って、今も営業しているんですね(会社の沿革には、さすがに日蔭茶屋事件のことは書かれていないw)。横浜の友人に会ったとき、おみやげでもらったお菓子がここのもので、まだ営業していたのかと驚いた記憶が。
1/9〜1/15にチェックした本・モノから
先週チェックした本・モノからいくつかピックアップします。
[MM週間記録1/9-1/15] 登録16件/購入0件/読了1冊
つながらない生活 — 「ネット世間」との距離のとり方
ブクログのこのページから。
ネットは生活に欠かせないモノだけど、同時にストレス源にもなります。最近ストレスになることが増えたな、と感じていて、非常にうまいタイミングでこの本を見つけたと思ったのでチェック。
内容紹介で特に惹かれたのが「グーテンベルクがもたらした黙読文化」「ハムレットの手帳」の2つ。この2つ(2章?)に何が書いてあるのか、すごく気になります。
プレジデント社
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幼年期の終り
Joy@そろ勉さんのこのツイートから。
SFも色々読んでみたいので、人が好きなSF作品は気になります。
タイトルだけだとSFだとは思えませんが、どんな作品だろう。
早川書房
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生きる覚悟
読売新聞「本よみうり堂」のこの記事から。
上田紀行さんの本は約20年前に「スリランカの悪魔祓い
(現在は文庫で出ているようです)」「覚醒のネットワーク (文庫版)」を読んだきりです。
これ以降にもたくさんの著書がありますが、ずっと遠ざかっていた人です。また改めて読んでみたくなってチェック。
角川マガジンズ(角川グループパブリッシング) (2011-11-10)
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大衆食堂パラダイス!
中日新聞の書評欄から。
内容紹介にある「気取らず、力強く飯を食え!」。実にいい言葉です。
今身近には「気楽に行けてごく普通の定食が食べられる大衆食堂」がありません。非常に悲しい。
学生時代に住んでいたアパートの近所に「ザ・大衆食堂」という感じの、母娘が経営する食堂があり、休日は遅く起きて日中図書館でのんびり本を読み、夜遅くならないうちにその食堂に行って定食を食べる、というのが黄金パターンでした。
そんなことを思い出し、身近にまた大衆食堂ができることを祈りつつチェック。
読了したのはこの1冊。読むのがしんどく、でも読了後はなんだか救われる気持がしました。
文藝春秋 (2010-08-04)
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いつ訪れるかわからない悲しみにどう向かうか〜ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
この本を知った直接のきっかけは読売新聞の書評にでていたこと。内容もさることながら、タイトルと表紙の絵?が強く印象に残りました。「手」と「書き文字」から、ベン=シャーンを連想してしまいました。だいぶ雰囲気は違うのですが。
主人公の少年オスカーが9.11同時多発テロで父親を亡くしていることもあってか、東日本大震災にからめて語られる (この書評もそうですし訳者あとがきにも言及がありました) のですが、できるだけそういうことは意識しないで読むようにしました。登場人物達が様々な形で悲しみ、その悲しみが癒える過程にただ寄り添う感じ。
フィクションとはいえ悲しみに向き合うことはしんどいことであり、ボリュームもあるし読みやすい本とは言えません。しかしなんとも表現しようのない心の揺れが残る小説でした。
その揺れがどこから来ているかというと、登場人物達が発する言葉です。生きること、考えること、そういう根源的な活動に対する問いが複数の人物からいくつも発せられます。そしてふるえ、泣いたり惑いながら、最後に悲しみが癒えていく。その生々しさに揺さぶられたのだと思う。
物語の最後に9.11同時多発テロ後に何度もテレビや新聞に映し出された「世界貿易センタービルから落ちる人」の連続写真が出てきます。その直前で、主人公のオスカーがもともと持っていた連続写真を並べ替えるシーンがあり、並べ替えられたあとの連続写真が載っているのです。その連続写真を見て、わたしは言いようのない衝撃を受けました。「あり得ない」順序に並べられた連続写真を見て、なぜ自分はそんなに衝撃を受けたのか。
自分が普段読むスピードだと、通勤時間に読んでへたすると2週間で終わらないボリュームですが、時間をかけて少しずつ読むより一気に読む方が向いている小説だと感じました。年末年始休みに時間を取って読んでそう感じました。もし1ヶ月早く読んでいたら間違いなく「2011年の10冊」に入れていたと思いますが、結果的に読むタイミングがすごくよかったかも。
訳者あとがきで知ったのですが、映画の公開が近いのですね。見てみたくなりました。普段はそんなこと思わないのですが。
愛知ではミッドランドスクエアシネマで上映のようです。
NHK出版
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1/2〜1/8にチェックした本・モノから
先週チェックした本・モノからいくつかピックアップします。
[MM週間記録1/2-1/8] 登録20件/購入0件/読了1冊
悪文 第3版
中日新聞の広告から。
名文を集めた本、名文を書くための本はたくさんありますが、悪文を集めた本はあまり聞かないな、と思ってチェック。
名文は名文であるが故に、なぜ名文なのか、どうすればこういう文章が書けるのかわかりにくい面がある気がします。名文までは行かなくても「悪くない文章」を書くためには、悪文を反面教師にした方が効果があるかもしれませんね。
スパイス、爆薬、医薬品 – 世界史を変えた17の化学物質
中日新聞の書評欄から。
タイトルが「銃・病原菌・鉄 (上巻・下巻)」みたいだなと思いました。実際意識してつけていると思います。
それはともかく、タイトルにある物質はどれも人類の歴史に深く関わってきたものだけに、歴史の面からも化学の面からも非常に面白そうだなと思ってチェック。
「化学構造式の読み方も身につく」というのがどういう内容を指しているかも気になります。
中央公論新社
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終わり続ける世界のなかで
中日新聞の書評欄から。
ノストラダムスの予言は結局外れました。最近だとマヤ歴の終末の話がありますね。
ノストラダムスの予言は色々ネタにはされましたが、本気で信じていた人がどの程度いるかはわかりません。しかしその「終末」を真に受けたことでどうなっていくか、というのはおもしろそうだなと思ってチェック。
この世界に限らず何かが永続する保証なんてどこにもないし、すべてのものは始まれば必ず終わりに向かって進んでいくものですが。
ノストラダムスにしても映画「2012」にしても、結局みんな「世界の終わり」の話が大好きだから出てくるんだろうなあ、なんて思います。
2012はレンタルビデオで見ましたが、「壮大なB級映画」だな、というのが一番の感想です。
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読了したのはこの1冊。読むのにちょっと苦労した面はありましたが面白かったです。
2012年の手帳セット
2012年になり、手帳も新しいものに切り替えました。
今年は複数をばらばら持ち歩くのではなく、ケースを作りました。
手帳ケースです。リヒトラブ マルチカードケースの橙です。大きさがちょうどいいので採用。中のカード差しは不要なので切り落としました。ほつれ止めを施してあります。
スケジューリングには昨年に引き続き半年手帳を使います。自分のスケジュール管理には、今のところこれが一番フィットします。
去年は週や月が変わるごとにウィークリー・マンスリーページの端を切っていたのですが、今年はしおりひもを追加しました。ひもは以前使っていたほぼ日手帳のカバーから切ってきたもので、マスキングテープで固定しました。半年たったら新しい手帳に付け替えます。
一緒に持って歩くのはモレスキン カイエ。去年は毎日何かをメモるのに使っていました (途中でいただきもののXSサイズのデイリーダイアリーになりましたが) が、今年は電話番号リストや職場カレンダーなど「1年通して目にする情報」を書くのに使います。
出金記録もこちらに書きます。通常の買い物はすべてレシートをもらいますが、自販機などレシートがないものの記録用です。去年は半年手帳のウィークリーページに書いていたのですが、スケジュールに出金記録を混ぜるより1カ所にまとめよう、と思いました。
後半のミシン目があるページに半年手帳のおこづかい帳リフィルを貼って、そこに書きます。家計簿に転記したら横線で消し、リフィルがいっぱいになったらページごと破って新たなリフィルを貼って続けていきます。
そしてRHODIAのdotpad。いつでもどこでもメモを取る習慣をつけたいと思って購入。RHODIAの方眼は罫線が強すぎで好かないのですが、これはよさそう。書いたら破ってケースに挟んでおきます。
自分の場合日常何か書くのには、ノートよりメモパッドが向いていそうです。
持って歩く筆記用具はARISTO 3FITの0.5mmシャープペンシル。繰り出し式の消しゴムがすばらしい。これで0.7mmがあれば最高なんですが。
12/26〜1/1にチェックした本・モノから
先週チェックした本・モノからいくつかピックアップします。
[MM週間記録12/26-1/1] 登録7件/購入1件/金額1400円/読了1冊
芸術新潮 2012年 01月号
書店店頭で発見しました。
現在神奈川県立近代美術館葉山館で開催されている「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト」。ベン=シャーンの大規模展は20年ぶり、その20年前の展覧会も見に行っています (新宿・伊勢丹美術館)。名古屋に来たら見に行こうと思っているので、予習のためにチェック。
Refills
Pocket Informant
Plan & Note
Refillsは日経ビジネスオンラインの記事から、Pocket InformantとPlan & NoteはTokyo Lullabyさんのこのツイートから
Plan & Noteは今回初めて知りました。RefillsとPocket Informantはスケジュール管理の定番アプリですね。
現在予定管理はgoogleカレンダー (家族と共有) と Wunderlist を使っているのですが、できれば1つにまとめたいと思っています。その候補になりそうなアプリ達をチェックしました。
googleカレンダーとWunderistで管理しているのは個人の予定だけだし、件数もかなり少ないのですが、この記事を読むとPocket InformantとGoogleカレンダーに加えてToodledoを導入するのもよさそうですね。自分にはかなりオーバースペックな気もしますが。
Refills 2.0.4(¥850)
カテゴリ: 仕事効率化, ビジネス
販売元: Cybernet Systems Co., Ltd. – Cybernet Systems Co., Ltd.(サイズ: 14 MB)
全てのバージョンの評価: (1,479件の評価)
Pocket Informant (Calendar, Tasks, Notes, Contacts) 2.02.10(¥1,100)
カテゴリ: 仕事効率化, ビジネス
販売元: Web Information Solutions, Inc. – Web Information Solutions, Inc.(サイズ: 13.7 MB)
全てのバージョンの評価: (862件の評価)
Plan & Note(Calendar/Task/Note) 1.6.7(¥350)
カテゴリ: 仕事効率化
販売元: gocgogo – Sang Han Ko(サイズ: 5.2 MB)
全てのバージョンの評価: (19件の評価)
購入したのはこの1冊。芸術新潮は初めて購入しました。
読了したのはこの1冊。図書館で借りました。なんだかとても複雑なものが胸に残りました。
映画公開も近いようです。珍しく映画を見てみようかと思いました。
NHK出版
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1999年発行の雑誌「東京人」を読む
ちくさこしょこしょ市で、約12年前に発行された雑誌「東京人」を買いました。
特集は「本はなんでも知っている。」。
「私流本の探し方」では、各分野について見開き2〜3ページのエッセイが掲載されています。その中から気になった言葉を引用します。
そう、本に限らず、何事も徹していれば、開いては寄ってくるものと、今さらながら会得する。
私流本の探し方[食]本は寄ってくるもの。 (矢吹申彦)
…だから、漫画を探すというより、自分が探している世界を用意してくれている、そんな街や書店なら、まだどこかに潜んでいるはずである。
私流本の探し方[漫画]あちこちの棚に身を隠している。 (植田実)
つまり、古本に関しては、理工学系の本となると、こころもとない状況だといわざるをえない。
コンピュータ関連というジャンルは「犬の一年」(普通の業界よりも七〜八倍のスピードで変化していく) といわれるくらいだから、古書という流通システムとなじまないのは、やむをえないのかもしれない。
私流本の探し方[サイバー]理工学系の本の命ははかなくて。 (遠藤諭)
本は出会いです。もちろん、これは本に限ったことだけではなくて、人だったり、場所だったり、物だったり、何にせよ御縁というやつだと私は思うのです。
とどのつまり、ブラブラ探し歩く時間とみつける眼力、もちろん体力。それが物欲道へのポイントのような気がします。おっと、それと御縁、出会いや勘もお忘れなく……。
私流本の探し方[絵本]御縁は大切にしよう。(土橋とし子)
国会議事堂の参院側別棟にある書店「五車堂」の店長、幡場益 (はたば・すすむ) さんのインタビューに、当時の五車堂の売れ筋本が掲載されていました。
取材は1999年初頭と思われますが、ラインナップは次の通り。
- 内藤克人「同時代への発言」
- 吉冨勝「日本経済の真実」
- リチャード=クー「日本経済回復への青写真」
- 三浦朱門「日本人をダメにした教育」
- マークス寿子「とんでもない母親と情ない男の国日本」
国会内に書店があることは、この記事で初めて知りました。「国会で在位三十五年 (当時) の『五車堂のおやじ』を知らないのはもぐり」とのこと。取材時も自民党の衆院議員が新人を連れて五車堂にあいさつに訪れていたそうです。
そして大宅壮一に関するルポ、これが一番面白かった。「質草の値付け」のエピソードと「歩きながら文章を書く」エピソードで、彼のすごさがわかります。
彼は若い頃大阪の質屋で商売見習いをしていたのですが、そこでは店の主人や筆頭の番頭が、衣類や時計などの質草を使って番頭や小僧に値付けの練習をさせていたそうです。ここでいう値付けは「担保としての価値に半年分の利息をつけ、質流れになってから売っても損をしないような値段を付ける」ことです。
かれはほんの見習いのうちから番頭や先輩を差し置いて、しばしば主人とぴたり同じ価格を付け、質屋として前途有望の折り紙を付けられたそう。
ルポを書いた鹿島茂によれば、この質草のエピソードが彼の仕事すべてに通じてくるとのこと。
そしてとにかくすごいと思ったのが、「歩きながら文章を書く」エピソード。彼は歩きながら頭の中に原稿用紙をイメージしてそこを一字一字埋めていったそうです。そして帰宅してから本物の原稿用紙にそれを移していた。年に五枚と書き損じしなかったそうです。歩きながら文章を考える人はよくいるでしょうが、原稿用紙をイメージして埋めていき、帰宅したらそれを移すだけ、という技ができる人がいるとは、そして年に五枚も書き損じをしない人がいるとは思わなかった。
他にも「総合翻訳集団」の話、モンテ・クリスト伯の翻訳エピソード、古地図を巡る井上靖とのバトルなど。とにかくエピソードひとつひとつが「規格外」で、目利きとして想像以上の人でした。
大宅壮一文庫は実際に行ったことがありませんが、文庫の目録が学生時代に通っていた県立図書館にあり、社会学のレポートを書くときにお世話になりました。
巻末の連載に「ふるほん探偵団」という、都内の古書店を紹介する連載コラムがあります。この号では葛飾区にある親子二代の古書店が紹介されています。そのうちの次男が経営する古書店は自動車・オートバイ関係に非常に強く、四十年代の名車のカタログ、社史、自動車雑誌を多く扱っている店です。
その店主の言葉
でもたまに悪いお客さんもいて、復刻版のカタログをオーブンに入れて、古く見せかけて持ってくる人もいるんですよ(笑)
には思わず笑ってしまいました。オーブンを使うと古びさせることができるとは発見でした。やりませんがw
特集は時代に左右されない内容ですが、小特集やコラム・広告は時代を感じます。ヨーロッパのミレニアム祝祭記やNTTドコモ・東京電力の広告が特にそう。
発行された年代にかかわらず、新しい発見もあって楽しかったです。