旅はいい、旅に出たい〜巡礼コメディ旅日記

「ドイツで一番人気のコメディアンが、約800キロの巡礼の道「聖ヤコブの道」を歩いた(一部は車利用)記録」である本書。
チェックしてからおよそ1年。ずっと本に呼ばれてる気がして、ようやく読みました。

巻頭に掲載された巡礼地図を見ながら読んでいったけど、終わりが近づくにつれて「もうすぐ終わっちゃうのか」という気持ちが強くなりました。
まず単純に旅日記として、とても面白い。道中出会う人々をよく観察してあだ名を付けたり、エピソードをとても面白く表現している。観察眼の鋭さと表現力はさすがコメディアン。
そして書くことの力を再認識。彼は道中、オレンジ色の日記帳に様々なことを書き留めていました。もともと日々の出来事を書き留めておこうという気持はなかったようだけど、出発前に書くことに衝動を感じ、そしてずっと書いていました。
各章の最後に「今日の覚え」という一言があるのですが、そこから彼が何を得たかが伝わってきます。

800キロの道のりを歩くのだから、当然楽しいことばかりではありません。足も痛めるしトラブルにも遭う。
何度もくじけそうになりながら、それでもとにかく自分の足で歩く。
途中車に乗った箇所があるとは言え、約40日かけて最後まで歩き通し、真正面から目の前の道と自分に向き合う姿は下手な自己啓発書より得るものは大きい。

彼が持ち歩いた薄っぺらいガイドブックには「何世紀もの昔から、人々は、文字どおりにも、また比喩的にも、ほかにみちがないときには聖ヤコブをめざし旅に出る」と書いてあったそうです。
彼は自身の病気をきっかけに、自分自身を見つめ直すために旅に出ました。
聖ヤコブの道でなくても、旅 (旅行に非ず) は人生に必須かもしれないと再認識しました。
知らない土地で右往左往し、歩き回りながら自分自身を見出す。日常生活にどっぷり浸かったままだったり、お仕着せの旅行ではそんな機会はなかなか得られない。
自分を普段と全く違う環境に長時間おかないと、自分自身を見出すことは難しいのかもしれない。

彼は宗教的には「キリスト教に仏教をつないだもの」らしいです。
「仏教との外国人」として思い浮かぶのが、魂の文章術—書くことから始めようのナタリー=ゴールドバーグだけど、西洋社会でも仏教の教えに共感する人は多いのでしょうか。

呼ばれて手にとって正解でした。紀行文学としても、自分を見つめ直すきっかけとしても、読んでよかった。
訳者あとがきに映画化の話が出ていました。映画もぜひ見てみたいです。

 

これを書くために色々検索していたら、著者の日本向けメッセージを発見しました。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=wFIIXZS7deM[/youtube]

 

youtube上にチャンネルもありました。ドイツ語が分からないので、ただ見てもおもしろさがかなり減っている気がする(´Д` )

日本版公式ページtwitterアカウントもありました

 

巡礼コメディ旅日記——僕のサンティアゴ巡礼の道
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原書です。

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こちらは英語版。ドイツ語は読めませんが、英語には挑戦してみたいです。

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