あたまがふるふるになる〜なんらかの事情

岸本佐知子さんのエッセイを読むと、脳が柔らかくなってくる気がします。普段は五箇山豆腐みたいな感じなのが、ふるふるのゼリーになる感じ。
書かれている内容も、現実にあったと思われるエピソードから虚実曖昧なものまでありますが、読んで楽しいから、ここではそんなことは気にしません。

例えばアロマテラピーにはまったときのエピソード。各種オイルや道具を買いそろえ、本格的にアロマテラピーにはまった時。ふとしたきっかけで素敵なアロマ生活が一瞬で崩れてしまった。その瞬間の描写におなかがよじれる。
あるいは読書をしているとき。ごくごくありふれた読書中の描写のはずが、気がつくと怖いことになっている。
この「気がつくと」の瞬間が、岸本さんのエッセイの一番の読みどころだと思っています。

岸本さん編訳の短編集「居心地の悪い部屋」のあとがきに

 昔から、うっすら不安な気持ちになる小説が好きだった。読み終わったあと見知らぬ場所に放り出されて途方に暮れるような、なんだか落ちつかない、居心地の悪い気分にさせられるような、そんな小説。

(中略)

 何か一つ話を読んだあと、そんな気分になれたら嬉しい。もちろん、すっきり爽やかな気分になって、自分の立っている地面のゆるぎなさを再確認するような読書体験も素晴らしいけど、もしも小説を読むことが電車に乗るようなものだとしたら、降りたときに元いた場所と同じところに立っているのではつまらないじゃないか、とも思うのだ。

「居心地の悪い部屋」p210〜211『あとがき』

とあります。

岸本さんのエッセイは、いつの間にか知らない場所に連れていかれるけど、そこには意外ときれいで心地いい景色が広がっていた、という感じがします。「こういうエッセイを書ける人だから、ああいう訳文が書けるんだ」と思いました。

岸本さんのエッセイを読むと、しなやかな心、しなやかな言葉がどんなものかがわかります。

 

なんらかの事情
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