今年もいい本に出会えた〜2014年・印象に残った本 #mybooks2014

気がつけば12月も中旬です。今年も色々な本に出会いました。
特に印象に残ったものをご紹介します。

 

ティムール=ヴェルメシュ「帰ってきたヒトラー」
間違いなく「今年もっとも衝撃的だった本」です。
ヒトラーが現代ドイツに突如蘇り、強烈な毒舌を吐く芸人として人気者になっていく…というストーリーなんですが、読んでいて困った気分になってしまいました。
なぜなら、冒頭にあった「本書について」に書いてある

最初は彼を笑っていたはずなのに、ふと気がつけば彼と一緒に笑っているからだ。

と、まさにそういう状態になったから。で、最後の最後で「んなバカな」となってしまう。

この本はドイツでベストセラーになり、映画化も決まっています。
ヒトラーに関する本の出版が禁じられているドイツで出版できたのは、これがあくまで「風刺小説」だからですね。風刺の対象は様々あると思うけど、おかしいと思っていたのに、いつの間にか彼と一緒に笑っている、その変化自体も含まれているでしょう。

 

ジェイムズ=カー・アルチャナ=クマール「総統はヒップスター」
これもヒトラー関連本です。ヒトラーがもし「ヒップでロハスな草食系メガネ男子」だったら、を描いたまんがです。
健康志向の源流がヒトラーやナチスにあることは、以前から指摘されています。だからこういうキャラクター化が突飛だとは思えないし「確かにこういう若者は少なくないかもしれん」と感じたのです。
ヒップスターたるヒトラーが着ているTシャツのロゴに、いちいち捻りと風刺が効いているのですが、自分が歴史をきちんと知らないせいで、ピンとこない部分があったのは残念。

 

ヒトラーは確かに怪物かもしれないけど、2度と現れない存在ではないのかもしれない、怪物は知らない間に、するりと自分のそばに来てしまうかもしれない。同じことは「アイアン・スカイ」を見た時にも感じましたが、このことは忘れてはいけませんね。
ヒトラーをネタにした本を続けて読んだのは偶然ですが、そう思いました。

 

 

田中兆子「甘いお菓子は食べません」
女の性について書かれた本はいろいろあるけど、40代の女 (まさに自分がそうだ) たちの持つ欲望そのものがテーマで、その根源的なものを書き出そうとする本に初めて出会いました。
登場人物が抱える困難は、現在の自分と重なるとは限らないけど、でも彼女たちの気持ちもわかるので、かなり心がえぐられていく感じがありました。

 

「サラエボ旅行案内—史上初の戦場都市ガイド」
NHKBSプレミアムで放送された「街は毎日が銃撃戦〜角田光代 ボスニア〜」で、彼女がサラエボを旅の目的地として選んだきっかけとして紹介したガイドです。古本は結構高値が付いていますが、市立図書館にあったのでそれを借りました。
旅行ガイドの体裁で、ボスニア戦争下でサラエボ市民がいかに生き抜いたかを紹介しています。
冷静さと乾いたユーモアで、却って悲惨さが浮かび上がる。

 

李龍徳「死にたくなったら電話して」
強い負のエネルギーを発している作品です。だからこそ、ページをめくる手が止まらなかった。
この小説に対して「不気味」だとか「救いがない」とか「毒々しい」とか、色々言葉は浮かびますが、でもそのどれもが違う気がします。
巷にあふれるポジティブでキラキラした言葉に対する反撃は、小気味いいくらいでした。圧倒的な負のエネルギーの前で、ありきたりのポジティブさが、いかに薄っぺらく感じるか。

著者がインタビュー

自分の経験に照らせば、死にたいようなつらい夜に、希望のある明るい話なんか読みたくない。暗い気持ちに寄り添うほうが届くはず

と語っていますが、これは本当にそう思う。
ネガティブはしんどいけど、ポジティブも同じくらいしんどいしね。

 

今年は色々な意味で濃い本たちに当たったと思います。
来年も、いい本に出会えるといいな。

 

帰ってきたヒトラー 上
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ティムール ヴェルメシュ
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帰ってきたヒトラー 下
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ティムール ヴェルメシュ
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総統はヒップスター
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甘いお菓子は食べません
田中 兆子
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サラエボ旅行案内—史上初の戦場都市ガイド
三修社
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死にたくなったら電話して
李龍徳
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