救いのない話〜居酒屋

なにがきっかけでこの作品を知ったかは忘れましたが、がんばって読んでみよう、という本をリストアップした中にあった「居酒屋」。約740ページを読むのに2週間以上かかりました。

読み終わってちょっとため息が出ました。最初から最後まで救いがないと思ったから。「救い」にあたるものが皆無ではないけれど、でも最終的に救いがないことには変わりがない。19世紀パリの労働者階級の悲惨な生活がこれでもかと書かれています。暴力の場面など、読んでいて辛い箇所もありました。
しかし読むのをやめられない。読むのを辛いと思っても、読むのやめようとは思わなかった。読まされてしまう力を感じました。

数少ない「救い」にあたるものが、主人公ジェルヴェーズが死にものぐるいで働いた末に自分の洗濯店を持ち、順調な経営で羽振りがよかった時期の話。そこから転げ落ちるように悲惨な結末に結びついていくのですが、この時期の話で考えたことが2つあります。
1つは「せっかくつかんだ幸せから転げ落ちてしまった原因はなんだったのだろう」、もう1つは「この時期の話がなかったら、『居酒屋』の読後感は変わっただろうか」。
前者について。ジェルヴェーズが身の程知らずだったのか。確かにそうかもしれない。でも、転落のきっかけ自体は、本当に小さなボタンの掛け違えからきているのかもしれない。
そして後者について。この時期の話がなかったら、おそらく読後感は変わっていたでしょう。幸せな時期があったからこそ、余計に最後の悲惨さが際だったと思うし。
その悲惨な結末の中、ジェルヴェーズはこの幸せな日々をどう思っていたのだろう。それはわかりません。読みが浅かったですね。

舞台になっている19世紀パリですが、非常に薄汚い描かれ方をしています。これは舞台が労働者が住む街だからなのか、そもそもパリ全体が薄汚かったのか。現代のパリは非常に華やかで美しい都市として紹介されていますが、実際にはそうでもないようですね。パリに行ったことがないので実際のところは知りませんが。

「居酒屋」の主人公ジェルヴェーズの娘のその後を書いた「ナナ」も読んでみたいけど、しばらく間をおきたい。続けて読むのはちょっとパワーがいりそう。

 

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