NO FUTURE, NO CRY!! 再び〜アナーキー・イン・ザ・JP

 

読むのが少々大変だった小説。主人公シンジの経験と、大杉栄が実際に生きた時代など、様々な時代や場面にあちこち飛んで、それを追いかけるのが大変だったからと思います。
大変な面はあったけど、小説自体は面白かった。現代のパンクス高校生の頭の中に大杉栄がよみがえる、という荒唐無稽と言ってしまえばそれまでかもしれないけど、でもその大杉栄に突き動かされるシンジのむちゃくちゃぶりにひっぱられて楽しく読みました。

シンジの頭の中の大杉栄と学校の世界史教師やシンジの兄が論争する場面が出てきます。これらの論争が個人的読みどころでした。
世界史教師との論争の中で大杉栄のこんなせりふが出てきます。

「〈浅い。いや、実に浅いよ。君はさっき、国を作るとかなんとか言ったね。その国って、いったいどういう意味なんだい? ネーションなのか、ステートなのか、あるいはカントリーか、ランドか、はたまたパトリオットか。はなはだあいまいだねえ〉」
(p83)

これに対する世界史教師の回答は「ネーション・ステート」、近代的な国民国家でした。

「国」と普段何気なく言いますが、その自分が口にした「国」が何を指しているのかまで意識することってない。そもそも自分の中で「国って何か」の定義ができていない。
普通に生活してる分には必要ないことかもしれませんが、例えば新聞などを読むときに「そこに書かれている『国』は何か」を意識して読むのはありかなと思いました。

全体を通して大杉栄の人生が展開されるけど、彼にに関するエピソードがどこまで本当かはわかりません。ヘミングウェイの「われらの時代」を訳したとか、パリでフィッツジェラルドとゼルダに遭遇した話とか。
その辺は「日本脱出記」を読めばわかるでしょうか。これも読んでみたくなりました。
大杉栄という人は、良しにつけ悪しきにつけ非常にスケールの大きい、人を惹きつけるものがある人なんだろうなと思います。シンジの兄と大杉栄の論争するシーンの直前に、これまでに映画や文学で、どれだけ大杉栄が取り上げられてきたかが列挙されていますが、それを見ても思う。
女性関係はだめです、こういう人受け付けない。

東京トンガリキッズにも出てきて、この作品でも叫ばれた「NO FUTURE, NO CRY (未来はないけど、泣いちゃだめだ)」という言葉。NO FUTURE 自体はセックスピストルズの歌詞に出てくる言葉のようです。
「NO FUTURE, NO CRY」、決して明るい言葉ではないけれど、でも心に残って不思議と励まされるのです。

「東京トンガリキッズ」とはかなり雰囲気が違っていたちょっと戸惑いましたが、微妙な湿っぽさとむちゃくちゃぶりが、そして登場人物のモデル探し (評論家とかアイドルとか政治家とか。実在の人物がそのまま出てるところもあった) が楽しかったです。

 

余談
日蔭茶屋って、今も営業しているんですね(会社の沿革には、さすがに日蔭茶屋事件のことは書かれていないw)。横浜の友人に会ったとき、おみやげでもらったお菓子がここのもので、まだ営業していたのかと驚いた記憶が。

 

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