わたしたちは負けない〜音もなく少女は

 

ボストン=テランという、自分が全く知らなかった作家の作品を読みました。新聞の書評欄で見たのが知ったきっかけなのですが、やはりタイトルが非常に印象に残ったせいだと思います。

ボストン=テランはミステリ作家。しかしこの作品は「ミステリ」だとは思いませんでした。作品を一言で表すとすれば「ある戦いの記録」がふさわしい気がします。
主人公イブを始め登場する女性達に感じ取ったキーワードは「わたしたちは負けない」。
イブにせよ、イブを支えるフラン、そしてその周囲の人にせよ、読み進めるのが辛くなるような、不条理としか言いようのない環境の中、それぞれに自分 (たち) の力で不条理から逃れ進んでいく。悲惨な中でも力を合わせて前に進む姿から思い至りました。

この作品に書かれているベトナム戦争の頃のニューヨーク・ブロンクス。かなり悲惨というか危ない地域として書かれています。ブロンクスは治安の悪い地域として有名ですが、今も当時と同じような状況なのでしょうか。

読み進めるのが辛く感じるところもありましたが、それでも最後にはほっとしたというか、なんだか救われた気がしたのです。読ませる文章で、悲惨だけどなんとかみんな救われてほしい、と思い、読むのをやめたいとは思いませんでした。
登場する女性達の強さ、イブと写真の関わり。読んでよかったと思います。

 

音もなく少女は (文春文庫)
ボストン テラン
文藝春秋 (2010-08-04)
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