豚ってなんなんだろう〜愛と憎しみの豚

豚は非常にありふれた食材です。ありふれているが故に、普段特別意識されることもない存在だと思います。また豚を忌み嫌う人々もたくさんいます。
タイトルにもある通り、愛されると同時に憎まれる豚の存在を追いかけたこの本。
自分は豚についてほとんど何も知らなかったことがわかりました。

豚肉を食べないというとまずイスラム教教徒を思い浮かべますが、ユダヤ教徒も食べないことは知りませんでした。
しかしイスラム社会でもかつて豚を食べていたらしいのです。それが「なぜ豚肉を食べてはいけないのか」になったのか、わかっている人は少ないようです。それはユダヤ教でも同じらしい。

直接豚に関わらない部分でも、この本で知ったことがいくつかあります。

例えば「ジャスミン革命」は、欧米人の勝手なネーミングに過ぎないこと。チュニジアではこのネーミングを「馬鹿にしている」と思う人々がいること。

1991年のソ連崩壊前後に、ロシア地域から100万人の移民がイスラエルにやってきたのですが、その中にはユダヤ人に加えてソ連からただ逃げ出したかっただけの「なんちゃってユダヤ人」もいたこと。

ユダヤ人とユダヤ教の関わり。血筋的にはユダヤ人でも非宗教的な人も多いこと。「(自分の) ユダヤ人としての立ち位置は、日本人が持つ宗教との距離に少し似ている」と語るユダヤ人が登場します。

チャウシェスクがいた時代のルーマニアと現在のルーマニアで、何が違っているか。共産主義が崩壊したとき、ルーマニアには対外債務がなかったのだそうです。これは国際社会では珍しいケースとのこと。しかし現在は借金まみれになってしまった。

 

この本の中で特に印象的だった言葉を紹介します。

世界各国の兵士たちが、同じ釜の飯を食べる時代がやってきたのだ。
(p324「終章 素足の豚—シベリア『チタ』」)

そしてもうひとつ、

「どんな手がかり、小さなことでも構いません。養豚、農業、何でも構いません。私は豚を追っています。豚にまつわる何かを、見つけ出さなくてはいけません。それなのに、では豚の何が知りたいのかと訊かれても、きちんと説明できない。でも、追っている。なぜ豚を追っているのか、本当のところでは私自身にも分かっていません。でも、追わなければいけない」
(p304「終章 素足の豚—シベリア『チタ』」)

著者はなぜ豚を取材しているのかについて、こんな風に語っています。
三重県出身の著者にとって「肉=牛肉」でした。牛肉文化の中で生きてきた著者が20代の頃に豚肉を愛する人たちに出会い、豚に対する認識が変わったことが、この本に至る旅のきっかけといえます。
この本の一番の読みどころは、小さなきっかけから自分が知りたいと思ったことを追いかけ、何ヶ月もかけて世界を走り回り、シベリアの果てまでたどり着いた著者のフットワークかもしれません。

「豚とは何か」という結論はこの本には書かれていません。ただ、豚と人間との関わりの深さ、豚を中心とした食と社会・歴史の関わりの深さがわかります。
食は人間にはなくてはならないものだからこそ、歴史・政治・宗教との関わりが深くなる。その深さが顕著に表れるのが豚なのかも。
愛されるのも憎まれるのも、人間との関わりの長さ深さ故なんでしょうね。

この本で取り上げられている国・地域はチュニジア、イスラエル、日本、リトアニア、バルト三国、ルーマニア、モルドバ、ウクライナ、シベリア。日本以外のアジアやアフリカ、南北アメリカのエピソードも、読んでみたかった。

 

愛と憎しみの豚
愛と憎しみの豚

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集英社
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余談
わたしにとっても「肉=牛肉」です。実家ではカレー・肉じゃが・野菜炒め、全部牛肉でした。牛肉でなければ鶏肉。豚肉はたまに使われるくらいでした。豚肉を日常的に食べるようになったのは、大学進学を機に上京してからです。

実家で食べていた数少ない豚肉料理をご紹介します。

材料

  • 豚肉薄切り・プロセスチーズ
  • 小麦粉・卵・パン粉

作り方

  • プロセスチーズを拍子木切りにする
  • 切ったチーズを豚肉で巻く。巻いたら楊枝で肉を止める
  • 小麦粉・卵・パン粉をつけて揚げる

非常に簡単だけどおいしい。これは豚肉で作らなきゃだめです。

 

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