今年読んで、強く印象に残った本 #mybooks2016
今年は昨日までに63冊の本を読みました。
その中から特に印象的だったものをご紹介します。
温又柔『台湾生まれ 日本語育ち』
「自分自身」「ことば」「国」の関わりについて、全く新しい視点で綴られた本。
自分の生まれた国で育ち暮らし、自分の国の言葉だけを話す生活をしていると、この3つは直接結びついているものと考えがちですが、それは当たり前じゃない。
ことばと人との関わりは、本当はもっと複雑ですごいものなんだと実感させられました。まさに「蒙を啓かれた」という感じです。
米原万里『米原万里ベストエッセイ(I)(II)』
池澤夏樹がIの解説に「つくづくこの人にはかなわないと思う」と書いていましたが、全く同感です。
彼女のエッセイをまともに読んだのは初めてですが、確かにこれだけ毒舌や下ネタを出しても下品にならず、知性あふれる痛快なエッセイを書ける人にはかなわない。
彼女の文章、もっと読んでみようと思います。
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モリー=グプティル=マニング『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』
本の持つ力を、強くストレートに実感させてくれました。
第二次大戦中、アメリカ軍は前線の兵士たちに1億4000万冊もの本を送ったそうです。「兵隊文庫」と呼ばれたその本たちを兵士たちはとても大事にし、時間さえあればむさぼるように読んだそうです。
悲惨な戦闘の中でも、兵士たちは本を読むことで「自分は人間である」という実感を取り戻していたのです。
そして本を読むことを覚えた兵士たちは、復員後に大学に通うなどして教養や職を得るようになったそうです。兵隊文庫は、市民の教養の底上げにもつながりました。
訳者あとがきには
本は武器であるという言葉は、決しておおげさな言葉ではないと思う。ヒトラーは無類の読書家だったそうだ。おそらく彼は、本の力をよく知っていたのだろう。だからこそ、一億冊もの本を燃やしたのではないか。そして、アメリカの図書館員や戦時図書審議会構成員もまた、本の力を知っていた。だからこそ、一億四千万冊もの本を戦場へ送ったのである。
とあります。
本の力を知っている両者が、正反対の行動に出たというのが非常に興味深い。
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チママンダ=ンゴズィ=アディーチェ『アメリカーナ』
2段組で500ページ以上ある小説ですが、読み出したら止まらない。
恋愛がベースでありながら、全体を通してアメリカ社会への批評が展開されます。
アメリカ社会で移民・女性・黒人が生きるとはどういうことか、アフリカからアメリカに渡った人と、アフリカに残った人との間にあるものとは。
主人公のイフェメルが、アメリカに来て、初めて自分が黒人であることを発見したという箇所が衝撃でした。
まずラブストーリーにどっぷりはまり、そしてアディーチェの社会批評の鋭さに驚嘆する。
アメリカは移民社会と言われるけど、だからこそ抱える複雑さがあるのですね。
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来年も、いい本にたくさん出会えますように。
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