ぞわっときた〜悪童日記
かなり前から気にはなっていたけれど、手が出せなかった「悪童日記」。
手が出せなかったのは、なんだか怖そうだったから。でも気になりつつ手を出さないも気分がよくない。
とりあえず三部作の1冊目たる「悪童日記」だけ読むつもりだったのですが、最後の最後で「え? そうなるの?」となり、これは全部読まねばなるまい、となりました。読むのが速くない自分ですが、これはとにかく前に進まずにはいられなくて、一気に読んでしまいました。
戦争が激しくなって、田舎のおばあちゃんの所へ疎開することになった双子の「ぼくら」。その「ぼくら」がいかにして過酷な世界を生き抜いていったか。
こういう小説は読んだことがない。読後には、なんとも表現しがたい衝撃が残りました。
この物語は、「ぼくら」が見聞きしたことを書きつけた作文によって構成されています。
文庫のオビにも印刷されている、「ぼくら」が作文するときのルール
感情を定義する言葉は、非常に漠然としている。その種の言葉の使用は避け、物象や人間や自分自身の描写つまり事実の忠実な描写だけにとどめたほうがよい。
最初はなぜ彼らがこういうルールを作ったのか、今ひとつ分かりませんでした。
しかし中盤、「ぼくら」が連行されていくユダヤ人たちの列を見たあと、彼らが誰で・なぜ・どこへ連れて行かれるのかを知りたくて
ぼくたちは理解したいんです
という言葉を司祭に投げかける場面があります。
なんでもない一言のようだけど、これで「ぼくら」が感情を排した日記を書く理由が、わかった気がしました。
そして、この作品はやはりこういう形式で書かれなければならなかったんだな、とも思いました。
そして戦争が終わり「ぼくら」がどう生き抜いていったかが、「ふたりの証拠」「第三の嘘」に続いていくわけです。
誰にでも合う作品ではないと思います。自分自身、読んでいて「きっついな〜」と思う箇所がありました。容赦なく心をえぐってくるところがある。それでもこの三部作は読んでよかった。もっと早く読むべきだった。
読んでいてぞわっときました。読むのではなく、読まされてしまう作品でした。
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