この5冊に出会えたことは大きかった #headquake5

ブログ「R-style」さんで「頭をガツンとやられた5冊の本 #headquake5」というエントリを読みました。そして自分にとっての「頭をガツンとやられた5冊の本」とは何か考えてみました。

高橋悠治「カフカ / 夜の時間」
著者の言葉の感覚の鋭さにうならされる1冊。内容は詩集に近く、表現や思考の鋭さが随所に現れています。

特にガツンときた言葉をご紹介します。


平和という名詞には動詞がない。
たたかうことは行為なのに。平和は不在によって定義できるだけ。
人間にとっての平和は戦争の前と戦争の後でしかない。
いまが平和ならやがて戦争になるだろう。

(「レナード・バーンステインの『平和のためのミサ』によせて」)

「なぜ戦争がなくならないのか」といった言説はいろいろありますが、一番納得がいったのがこれです。

 ことばをかきはじめた時、それによって世界がもっとよくみえるとおもったが、ことばはただ光であるだけではなかった。それは曇り空のように、ひとつひとつをあざやかにみせながら、その全体に影をなげかけるものでもあった。

 自分のかいたことばにまようこともある。それが別な発見のはじまりとなることもある。ことばのとどかないあちら側に真実があるとはかぎらない。かかれてしまえば、ことばは真実ではつくせない意味をもつこともありうるだろう。

 よみかえすことは、かきかえることだ。メモをかき、かきうつし、かきなおす。自分に必要なのはそれだけだ。本のかたちになった言葉は失われたメモ、他人にひろわれた紙片、もうかきなおすことはないが、どっちみち最終的なかたちにたどりつくことは決してない未完の断片なのだ。…
(あとがき)

書くこと、表現することの持つ意味を、これだけ鮮やかに切り取った言葉を知りません。

 

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内田百閒「サラサーテの盤」
今はもうない福武文庫の1冊。
内田百閒の小説の中でも特に好きな「梟林記」「東京日記」「サラサーテの盤」が収録されています。
特に「梟林記」。10ページほどの短い小説ですが、最後の最後、女の子の無邪気な行為がとても恐ろしく感じてしまう。
「梟林記」は現在ちくま文庫で読めます。

 

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岡本かの子「食魔 岡本かの子食文学傑作選」
小説と随筆の2部構成で「食べること」の意味を考えさせられます。特に小説は「これはすごいものを読んだかもしれない」と思ってしまったほど鬼気迫るものがあります。
人間の業を真正面から受け止めることがどういうことなのか、がわかります。

 

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岡敦「強く生きるために読む古典」
著者の人生が非常に色濃く出たブックガイドです。本は生きのびる助けになるし、自由に読んでいい。難しく感じていた古典も、人生の強力な武器になる。
「本をどう読むか」「人生と本の関わり」について、今までない視点を得られます。

 

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高山真「愛は毒か 毒が愛か」
よく「幸せになりたい」と言いますが、人生では幸せそのものが重荷になることもあるわけで。「当たり前の幸せ」ではなく「自分にとっての幸せ」を得るためにはどうしたらいいのか。そのためには何を考えるべきなのか。
この本を読んで、自分が世界とどう関わっていくか、が少し変わった気がします。
もともと女性向けに書かれたエッセイで内容はちょーっと下品ですが、男性でも女性でも、幸せについて考えてみたい人にお勧め。

 

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わたしはR-styleさんのように「なぜこれがガツンときたのか」は明確に分析できません。でもこの5冊が本当にガツンときたことは確かです。

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