1999年発行の雑誌「東京人」を読む

 

ちくさこしょこしょ市で、約12年前に発行された雑誌「東京人」を買いました。
特集は「本はなんでも知っている。」。

目次です

 

特集の扉です

「私流本の探し方」では、各分野について見開き2〜3ページのエッセイが掲載されています。その中から気になった言葉を引用します。

そう、本に限らず、何事も徹していれば、開いては寄ってくるものと、今さらながら会得する。
私流本の探し方[食]本は寄ってくるもの。 (矢吹申彦)

 

…だから、漫画を探すというより、自分が探している世界を用意してくれている、そんな街や書店なら、まだどこかに潜んでいるはずである。
私流本の探し方[漫画]あちこちの棚に身を隠している。 (植田実)

 

つまり、古本に関しては、理工学系の本となると、こころもとない状況だといわざるをえない。

コンピュータ関連というジャンルは「犬の一年」(普通の業界よりも七〜八倍のスピードで変化していく) といわれるくらいだから、古書という流通システムとなじまないのは、やむをえないのかもしれない。
私流本の探し方[サイバー]理工学系の本の命ははかなくて。 (遠藤諭)

 

本は出会いです。もちろん、これは本に限ったことだけではなくて、人だったり、場所だったり、物だったり、何にせよ御縁というやつだと私は思うのです。

とどのつまり、ブラブラ探し歩く時間とみつける眼力、もちろん体力。それが物欲道へのポイントのような気がします。おっと、それと御縁、出会いや勘もお忘れなく……。
私流本の探し方[絵本]御縁は大切にしよう。(土橋とし子)

 

国会議事堂の参院側別棟にある書店「五車堂」の店長、幡場益 (はたば・すすむ) さんのインタビューに、当時の五車堂の売れ筋本が掲載されていました。

取材は1999年初頭と思われますが、ラインナップは次の通り。

国会内に書店があることは、この記事で初めて知りました。「国会で在位三十五年 (当時) の『五車堂のおやじ』を知らないのはもぐり」とのこと。取材時も自民党の衆院議員が新人を連れて五車堂にあいさつに訪れていたそうです。

 

そして大宅壮一に関するルポ、これが一番面白かった。「質草の値付け」のエピソードと「歩きながら文章を書く」エピソードで、彼のすごさがわかります。
彼は若い頃大阪の質屋で商売見習いをしていたのですが、そこでは店の主人や筆頭の番頭が、衣類や時計などの質草を使って番頭や小僧に値付けの練習をさせていたそうです。ここでいう値付けは「担保としての価値に半年分の利息をつけ、質流れになってから売っても損をしないような値段を付ける」ことです。
かれはほんの見習いのうちから番頭や先輩を差し置いて、しばしば主人とぴたり同じ価格を付け、質屋として前途有望の折り紙を付けられたそう。
ルポを書いた鹿島茂によれば、この質草のエピソードが彼の仕事すべてに通じてくるとのこと。
そしてとにかくすごいと思ったのが、「歩きながら文章を書く」エピソード。彼は歩きながら頭の中に原稿用紙をイメージしてそこを一字一字埋めていったそうです。そして帰宅してから本物の原稿用紙にそれを移していた。年に五枚と書き損じしなかったそうです。歩きながら文章を考える人はよくいるでしょうが、原稿用紙をイメージして埋めていき、帰宅したらそれを移すだけ、という技ができる人がいるとは、そして年に五枚も書き損じをしない人がいるとは思わなかった。
他にも「総合翻訳集団」の話、モンテ・クリスト伯の翻訳エピソード、古地図を巡る井上靖とのバトルなど。とにかくエピソードひとつひとつが「規格外」で、目利きとして想像以上の人でした。

大宅壮一文庫は実際に行ったことがありませんが、文庫の目録が学生時代に通っていた県立図書館にあり、社会学のレポートを書くときにお世話になりました。

 

巻末の連載に「ふるほん探偵団」という、都内の古書店を紹介する連載コラムがあります。この号では葛飾区にある親子二代の古書店が紹介されています。そのうちの次男が経営する古書店は自動車・オートバイ関係に非常に強く、四十年代の名車のカタログ、社史、自動車雑誌を多く扱っている店です。
その店主の言葉

でもたまに悪いお客さんもいて、復刻版のカタログをオーブンに入れて、古く見せかけて持ってくる人もいるんですよ(笑)

には思わず笑ってしまいました。オーブンを使うと古びさせることができるとは発見でした。やりませんがw

特集は時代に左右されない内容ですが、小特集やコラム・広告は時代を感じます。ヨーロッパのミレニアム祝祭記やNTTドコモ・東京電力の広告が特にそう。

 

 

発行された年代にかかわらず、新しい発見もあって楽しかったです。

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