《書評》穴ではなく、ドーナツを見よう〜とにかくやってみよう──不安や迷いが自信と行動に変わる思考法

「穴ではなく、ドーナツを見よう」は、この本の中に出てきた標語です。欠けているものではなく恵まれているものを探そう、という趣旨

この本の前書きに

初めてのことに思い切ってチャレンジするときや、これまでとは違うやり方で何かをするとき、誰もが不安を感じます。そのせいで前に踏み出せなくなってしまうこともよくあります。
これを乗り越えるカギは「不安は感じてあたりまえ、とにかくやってみよう!」です。

とあって、それでこの本を手に取ってみました

この本はなぜ不安になってしまうのか、の解説から始まり、苦痛から解放される方法、ポジティブになるトレーニング、パワーを引き出す段階まで、いくつかのトレーニングや図表を挟んで進んでいきます。
例えば「『苦痛からパワーへ』の言葉づかい」という図表があるのですが、これはコピーして手帳に貼っておこうと思っています。これはついついネガティブに言ってしまいがちなことをポジティブに言い換えるための例みたいなものです (「もしこうでさえあれば」→「この次は」など)
トレーニングで気になったものは「内なるパワーを感じるためのエクササイズ」「お互いにプラスになる会話法」「たくさんの選択肢に気づく方法」「大きく受け入れる人間に近づくための5つのステップ」など。

この本で一番印象的だったのは「不安に思っていることの90%は実現しない」という言葉。
「だからネガティブになっても意味がない、落とし穴に落ちるときは落ちるのだから、落ちる前から落ちることを心配してもしようがない」ともとれるし、
「10%は実現するんだから気持ちをそれに向けておくべき、「落ちない」と思っていていきなり落とし穴に落ちるよりも、「落ちるかも」と警戒していて落ちた方が、実際にはけがが少なくて済む」、とも言えるかもしれない。
前者は「ポジティブ」な考え方だし、後者は「ネガティブ」な考え方ですね。例えが変ですが。後者をすぐに思い浮かべてしまうのは、やはり自分がネガティブな考えの持ち主だからだろうな。

前出の「『苦痛からパワーへ』の言葉づかい」の中に「『私のせいじゃない』→『すべて私の責任だ』」というのがあります。自分の身に起きていることはすべて自分の責任である、という考えは、自己啓発書でよく出てくる考え方ですね。わたしはこの考え方自体には賛成なのだけど、その一方でこうも思う。
自分の身に起きていることがすべて自分に原因があるとすると、自分が人に傷つけられることも自分が悪い、自分を傷つける人は悪くない(なにしろ悪いのは自分なのだから)、ということになるのだろうか、と
例えば、職場で理不尽な扱いをされて苦しんでいる人がいるとする。その人が理不尽な扱いをされて苦しむのはその人に原因があるからだ、とすると、それは回り回って「相手に原因があれば、相手に理不尽なことをしたり傷つけてもいい」ということを認めることになりはしないか、と
誤解しないでいただきたいのですが、自分は「自分は悪くない、相手がすべて悪い!!」と言いたいのではありません。ただ、そういうことが成り立つ可能性があるのではないか、と思うだけです

そのことについての記述を、長くなりますが引用します

…ある生徒がこんな議論を持ちかけた。もしすべてに「イエス」と言うならば、すべてを受け入れることになる。すべてを受け入れてしまったら、世の中の間違いをただす行動ができなくなってしまうのではないか?
これに対して私はこう説明した。「イエス」と言うことはポジティブな行動であり、「ノー」と言うことはあきらめること。私たちは何かを変えられると思うときだけ、変化を起こそうと立ち上がることができる。たとえある状況に対して「ノー」と言ったとしても、その状況のおかげで成長する可能性には「イエス」と言える。自分の置かれた状況が絶望的だと思ってしまったら、ただ手をこまねいて、叩きのめされるままになるしかない。
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…難題にもチャンスが隠れているということに「イエス」と言っている。
「イエス」と言うことは、あきらめることではない。
「イエス」と言うことは、自分の信念のために立ち上がって行動することだ。それによってどんな運命が突きつけられようと、なんらかの意義や目的をつくりだせるだろう。

これは自分が思ったことに対する直接の答えではないかもしれない、けど、この点に言及している本は、わたしは初めて見た

わたしはこれまで、とにかくネガティブというか厭世的な考えの持ち主でした。親からも「おまえはなんでそんなに厭世的なんだ」と言われたこともあるくらい。
別に意図してネガティブだった訳ではないのだけど、しかし最近、ネガティブであることにも疲れてしまった。でもポジティブであり続けることは、これはこれでネガティブ以上に疲れてしまう。
だからと言うわけではないけど、自分はとにかくポジティブになりたいとは思わない、でも少なくとも「ネガティブではない」地点を目指したい。そういう地点を目指すにも、この本に出てきたいくつかのエクササイズは役に立ちそうです。

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