クローズアップ現代「電子書籍が「本」を変える」を見た
10月18日に放送されたクローズアップ現代「電子書籍が「本」を変える」を見ました。
ニュース7からなんとなく見ただけだったのですが、津野海太郎さんが出演していたのでおおっ、となりました。
わたし自身は「電子書籍による読書」はほとんどしていません。iPhone上で青空文庫の作品を読むくらい。
確かにiPhoneでの読書は細切れ時間にちょこっと読むにはいいと思ったけど、なんだかなじめなくて最近はやっていません。
今自分が電子書籍について感じていることを書いてみます。
あくまで主観によるもので、実情を正しく把握していない面もあるでしょうが、ご容赦ください。
心と響き合う読書案内で小川洋子は
どれほどの時間が空こうと、本はちゃんと待ってくれています。年齢を重ねた自分に、必ずまた新たな魅力を見せてくれます。本は、人間よりもずっと我慢強い存在です。(p5「まえがき」)
と書いています。
例えば紙の本なら、手元にずっと残っている本をすぐに手に取ってみることができます。自分の場合、高校生〜20代前半に読んだ本がまだいくつか手元に残っていますが、いつでも好きなときに読めます。実際そうやって読み返していますし、その本を人に貸したりもしています。
これが電子書籍だった場合どうなるのでしょう。時間が経って読みたくなったときに、端末が使えなくなったり書籍のフォーマットが変わってしまって読めない、ってことが起こりそうな気がするのですが。「かつて自分が読んだ本と、時を経て再開する」ことが難しくなりそう。
個人的には、これが電子書籍にとっての最大の短所に感じる。
そのときの端末で購入し直せばいい、ということになるのでしょうか。
あと「本を貸してもらう楽しみ」は半減しそうな気がする。根拠はありませんがそんな風に感じる。
もっとも、これは電子書籍に限った話ではなく、デジタルデータ全体に言えることでしょうが
あと、電子書籍ばかりになってしまうと「本に囲まれる幸せ」は味わえない。これは自分の部屋の本棚でもそうだし、図書館でも書店でもいい。本を選ぶきっかけで、書店での「一目惚れ」「本に呼ばれる」というのは意外と大きいと思うんだけど、電子書籍だとそういう幸せは少なくなりそう。
自分は結構行きつ戻りつしながら本を読むのですが、電子書籍ではこれが意外とやりにくいです。「めくる」感覚の違いによるかもしれません。
否定的な考えが多くなりましたが、やはりこれは自分が「本というブツ」、見た目や感触も含めて、あの紙の固まり自体が大好きだからだと思います。なにより本というブツが好きだから、こういう考えになってしまうのかも。
だからといって、電子書籍そのものを否定するつもりはありません。電子書籍によってチャンスを得る人が多くいると思うし、リファレンスは絶対電子書籍の方が向いている (でも紙の辞書も好きだ。辞書に限らず「重さも本の味のうち」と思っています)。ソーシャルリーディングには自分も興味があります。
川原泉「ブレーメンII」では、紙の本は貴重品になっています。いつかそういう時代も来るでしょう。わたし自身、どこかで考えが変わって電子書籍万歳となる可能性も0ではないけど、それまでは電子書籍も気にしつつ、紙の本を存分に楽しみたい。
あとがき
津野海太郎さんがらみの話を少し。
津野さんには、一度だけお目にかかったことがあります。10年ほど前の話ですが、大学の先生が開いたシンポジウムで講演なさっていました。
そのシンポジウム後の打ち上げにわたしも参加したのですが、結局津野さんとお話しすることはできませんでした。非常に残念なことをした。お会いできたら聞きたかったことがあるのに。
なにが聞きたかったのかというと、高橋悠治「カフカ/夜の時間—メモ・ランダム」の冒頭にあるカール=クラウスの詩「Nächtliche Stunde」の訳者が誰か、ということ。非常に印象的な訳なのです。
おそらく訳は高橋悠治自身なのでしょうが、確信が持てなかったので。
しかし「カフカ/夜の時間—メモ・ランダム」って、今だと古本でむちゃくちゃ高いんですね。
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