はやい言葉、おそい言葉
「暮しの手帖」を買いました。これまで図書館などで読んでいましたが、買ったのは初めてです。
目的は、毎号の表2に書いてあるこの言葉です。これを抜き書きノートに書きたくて購入しました。
これは あなたの手帖です
いろいろのことが ここには書きつけてある
この中の どれか一つ二つは
すぐ今日 あなたの暮しに役立ち
せめて どれかもう一つ二つは
すぐには役に立たないように見えても
やがて こころの底ふかく沈んで
いつか あなたの暮し方を変えてしまう
そんなふうな
これは あなたの暮しの手帖です
この言葉は、暮しの手帖を創刊した花森安治が書いたものです。
この言葉は、暮しの手帖という雑誌、その中に書かれている記事についてのものです。しかし改めて読んでみて、これは雑誌記事以外のことにも成り立ちそうな気がしました。
例えば「いろいろのこと」は雑誌記事のことですが、名言だと考えてみるとどうでしょう。
すぐに役立つ名言もあるけれど、そのとき役に立たないように見えて、いつか自分の中で大きな意味を持ってくる名言もある。
こんな風に考えることもできるのではないでしょうか。
「いつか自分の中で大きな意味を持ってくる名言」で、真っ先に思い浮かぶのが夏木マリのインタビューです。
十数年前にある雑誌で夏木マリのインタビューを読みました。その中にこんなようなやりとりがありました。
Q. 夏木さんのようになるにはどうしたらいいの?
A. すべてをあきらめることです。
当時のわたしは、この答えの真意がわかりませんでした。わからなかったせいなのか、このやりとりがずーっと心に引っかかっていました。
でも最近、第7回西三河朝会課題本の「生きるチカラ」を読んで、この中に出てきた「運をぐるぐる回す」という部分と夏木マリの言葉がつながったのです。
…何もしなければ何も起こらない。やはりここで重要なのは、運をぐるぐる回すというところにあるのではないか。バタフライ効果ではないけれど、とにかくちょっとした動きでも、それがあることによって運がいくらかでも動くことになり、それが重なっていくと、それがいつしか大きな動きになる可能性も出てくる。
(「生きるチカラ」p153「運をぐるぐる回す」)
「あきらめない = 何かに執着がある」状態とすると、執着がある状態で新しい動きを起こすのは難しい。例え失敗したり苦しかったとしても、運を回すためにはそれに執着せず、次に進む力が必要になる。常に運をぐるぐる回すためにはあきらめて前に進むことが重要、あきらめるからこそ前に進める、ということなのではないか。そんな風に自分には感じられたのです。
もちろんこれは自分勝手な解釈で、インタビュー時の夏木マリの思いとは全然関係ないかもしれない。でも、自分なりに解釈して納得できたので、それでいいと思っています。
夏木マリの言葉は、知ってから自分の中にすとんと収まるまで十数年かかりました。これに限らず、知ってから時間が経って「ああ、そういうことだったのか」とわかる言葉は少なくありません。
知ってすぐ納得できて自分のためになる言葉も多い。でもむしろ自分は時間がかかって納得できた言葉を、より大切にしたいと思うのです。
時間をかけて大切にしていける言葉に、これからも出会えたらと思います。そしてそういう言葉をたくさんノートに残していけたら、と思っています。
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