2017年に読んだ本、これはよかった #mybooks2017
2017年は昨日までに82冊の本を読みました。自分としては結構読みましたね。
特に印象的だった本を紹介します。今年はあえてコメントはつけません。
並べた順序に深い意味はありません。
ことばについて考えさせられた本
『日本語のために (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 30) 』
売り上げランキング: 151,627
社会の「根底」「暗部」について考えさせられた本
ブレイディみかこ『子どもたちの階級闘争』
みすず書房
売り上げランキング: 7,101
笙野頼子『ひょうすべの国』
仕事について新しい視点を得られた本
辻山良雄『本屋、はじめました』
苦楽堂
売り上げランキング: 57,256
オーレ=トシュテンセン『あるノルウェーの大工の日記』
エクスナレッジ (2017-09-29)
売り上げランキング: 11,981
歴史についての印象が変わった本
三木 亘『悪としての世界史』
文藝春秋
売り上げランキング: 319,612
アメリカを知るために役立った本
タナハシ=コーツ『世界と僕のあいだに』
慶應義塾大学出版会
売り上げランキング: 21,685
渡辺由佳里『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』
晶文社
売り上げランキング: 331,525
J.D.ヴァンス『ヒルビリー・エレジー』
光文社
売り上げランキング: 8,366
〆切の力を見せつけられた本
左右社編『〆切本』『〆切本2』
左右社 (2016-08-30)
売り上げランキング: 4,074
左右社 (2017-10-07)
売り上げランキング: 16,324
来年も、たくさんのいい本に出会えるといいな。
2017年はずいぶんと映画を見た
今年は昨日までに44本の映画を見ました。2016年は27本でした。
なんでこんなに見たんでしょうね。10日に1本以上見てますね。
その中で特に印象的だったものをご紹介します。
彼らが本気で編むときは、
見終わった後にこれほど複雑な感情に襲われた映画は、過去にありません。
そこに否定的なものは全く含まれないのですが、表現のしようのないものばかりが残りました。
映画「彼らが本気で編むときは、」公式サイト 生田斗真主演。2017年2月25日(土)全国ロードショー!
映画「彼らが本気で編むときは、」公式サイト。生田斗真主演。「かもめ食堂」「めがね」の荻上直子監督最新作。2017年2月25日(土)全国ロードショー!
エル ELLE
イザベル=ユペールを初めて見たのは「アスファルト」というフランス映画ででした。
彼女についてなんの予備知識もなく見て、ただ「この女優いいなあ」と思い、また出演作が公開されたら見に行こうと思うようになりました。
それで今年は「未来よ、こんにちは」も「エル ELLE」も見たのですが、とにかく「エル ELLE」は強烈だった。「こんな女性を演じられるなんて、すげぇ」しかない。
余談ですが、「エル ELLE」と「女神の見えざる手」って、主人公の造形に関する基本思想が同じであるように感じます。
>映画『エル ELLE』公式サイト
世界が「衝撃」×「絶賛」!! 賞レース席巻の極上エロティックサスペンス。|映画『エル ELLE』公式サイト
ドリーム
困難な状況を描いても悲壮な感じがせず、明るくしなやかで、それぞれの立場で信念を持ってできることやり、周囲を巻き込んで成功をつかんでいく。
サクセスストーリーはいくつもあるけど、こんな作品は滅多にない気がする。
個人的には、これから社会に出る、あるいは出たばかりの若い人に勧めたいと思います。
もちろん、いま社会の最前線で働いている人たちにも。
映画『ドリーム』オフィシャルサイト – 20世紀フォックス
2017年 第89回アカデミー賞(R)3部門(作品賞、助演女優賞、脚色賞)ノミネート宇宙開発史の陰に、世界へ夢と希望をもたらした3人の女性がいた。大ヒット上映中!
わたしたち
自分の身近でも過去にあったような小学生のいじめがテーマで、正直見ていてしんどい場面もありました。
でも、登場する子どもたちの様子がとても繊細に描かれていて、最後に光を感じることができて、非常によかった。
映画『わたしたち』公式サイト
映画『わたしたち』公式サイト
2018年の手帳には、見たい映画を着々とメモしています。。
これからも、可能な限り映画館に行きます。
2017年・印象に残った言葉
今年も本や映画で、印象的な言葉に出会いました。
そのうちのいくつかをご紹介します。
「母さんは幸せ?」
「そんなの人に聞くもんじゃない。幸せかなんて考えたら、うつになる」
☞ 映画「20センチュリー・ウーマン」
幸せって強烈な言葉よ
☞ 映画「ありがとう、トニ・エルドマン」
どちらも最初は「うーん、どうかな」と思ったものの、ラストでは見てよかったと思った映画です。
「20センチュリー・ウーマン」は母と息子の、「ありがとう、トニ・エルドマン」は父と娘の映画ですが、どちらにも幸せに関する言及があったのが印象的でした。
特に「20センチュリー・ウーマン」は、このやりとりに出会えただけでも映画館に見に行った甲斐はあったと思います。
一日だけ幸せでいたいならば、床屋に行け。
一週間だけ幸せでいたいなら、車を買え。
一ヶ月だけ幸せでいたいなら、結婚しろ。
一年だけ幸せでいたいなら、家を買え。
一生幸せでいたいなら、正直でいることだ。
☞ 西洋のことわざ・教えてもらったのは名言コツコツ
このことわざ自体はずいぶん前から知っていますが、最近特に「一生幸せでいたいなら、正直でいることだ。」は、その通りだと痛烈に感じます。
ずっと正直で居続けるのは難しいけど、それでも自分を見失わないようにしたいものです。
年をとるということは、楽しみの幅が広まっていくこと、深まっていくことを実感できるということ。素敵だわ。
☞ 高山真のよしなしごと「徐々に徐々に」
先日職場で30代前半の男性社員に「わたしだって四捨五入したら50だよ」と言ったら、えらく動揺されました。
それはともかく、この年齢になって以前より素直に様々なことを楽しめるようになったと思います。がつがつせず、のんびりと、ただ流されていくだけではない。
その点は年を取ってよかったと思います。
辛い時に辛い顔をするのはね、他人にその辛さを評価して欲しいからさ。そんなものを評価してもらってどうするんだい。辛い思いをしているからといって偉くなるわけでもなし。
☞ ブレイディみかこ「花の命はノー・フューチャー: DELUXE EDITION」p247
辛さをわかってほしい、評価してほしいという気持ちは起きがちだけど、それに自分は何を求めているのか。心に刺さりました。
…計画できる固定客に背を向けた「王立」の企画は、やはり一種の蛮勇に違いない。
だが、そうした“蛮勇”がなければ新しいものはなにも生まれない。この単純な真理を身を以て証明したのが「王立宇宙軍」であり、「新世紀エヴァンゲリオン」だった。
宇宙に行くことに現実的な意味がなにひとつなくても、宇宙に行くことによってしか見えない景色がある。「王立宇宙軍 オネアミスの翼」は、つまりそういう映画なのである。
☞ 大森望「10年を経ても“いまの映画”であり続ける理由」(DVD「王立宇宙軍 オネアミスの翼」解説)
「王立宇宙軍 オネアミスの翼」は何度見たからわからない映画です。これまで見たアニメ映画のベストと言っていいかもしれない。
先日久々に見て、この解説に改めて納得しました。
蛮勇が必要な時って、やっぱりあるんですよね。
SNSで自分が読んじゃいけないタイプの投稿を読んで、勝手に精神的なダメージを受ける事を「ソーシャル自損事故」と命名しましたから、皆さんお使いください。誰も悪くないの。運が悪いだけなの。
— MoritsuguKeiko(森次慶子) (@W_Fei_hung) 2017年8月14日
「名前をつけるって重要だな」と思ったツイート。
SNSを利用している限り、不用意に精神的ダメージを負ってしまうことは避けられないでしょう。いざそういうときに「これは○○なんだ」って言えることで、気持ちが収まることもありますしね。
来年もまた、たくさんの言葉に出会えますように。
筑摩書房
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2016年に出会った、忘れたくない言葉
今年も様々なメディアを通して、気になる言葉に出会いました。
その中で、特に「忘れたくないな」と思ったものをご紹介します。
人生は泣く日笑う日ごみ出す日
毎日新聞 2016年2月12日「仲畑流・万能川柳」
思わず笑っちゃいましたが、真実をついた句だと思います。
生きていれば物理的にも精神的にも大量のごみが発生するけど、それはちゃんと出していかないとね。
「ごみはまめに拾い、まめに捨てる」は鉄則ですな。
情けない自分ていうのをどっかで笑えないと生きていけないところありますよね
強くいなくちゃいけない 偉くなくちゃいけない しっかりしてなくちゃいけない 自分は間違わないっていう人って
うざい枝元なほみ
NHK SWITCHインタビュー 達人達「枝元なほみ×高野秀行」
今年は「天中殺か」というくらい、困難が降りかかってきた1年でした。それもあって心身共にに苛まれる時間が多かったのですが、枝元なほみのこの言葉を聞いて、気が楽になりました。
「強くいなくちゃいけない 偉くなくちゃいけない しっかりしてなくちゃいけない 自分は間違わない 」って考えて、余計辛くなっていたことに気づいたから。
「役に立つのか?」
映画「ブリッジ・オブ・スパイ」
映画の中で、逮捕されたソビエトのスパイ(マーク=ライランス)が彼を担当する弁護士(トム=ハンクス)に「不安は?」と問いかけられて発した言葉です。
わたし個人は「それは役に立つのか?」という問いはあまり好きじゃありませんが、このやりとりには納得しました。
不安に苛まれた時にこれを思い出し、気持ちを落ち着ける事ができたのは確かです。
やっぱりみんな欠点ってありますやん
それを突っついとったってしゃあないですやんNHK ドキュメント72時間 2016年2月19日放送 「大阪・天神橋筋 商店街のベンチにて」
覚醒剤でつかまった友人を支える男性
天神橋筋商店街の端にあるベンチに、覚醒剤で逮捕歴がある友人と共に座っていた男性の言葉です。男性は刑を終えて出所した友人を支えています。
確かに誰にでも欠点はあるし、それを突いて何かが良くなるかというと、そんなことはない。
他人を突っつく労力があるなら、もっと実のあることに使いたいですね。
大事なのは「落ち込まない意志」ではありません。落ち込みを回避する儀式などの、「創意工夫」です。
4月9日 朝日新聞be「悩みのるつぼ」岡田斗司夫の回答から
「創意工夫」は、生きていく上で「努力」とか「がんばる」より重要ですね。人生のエネルギーは限られているから、それを精神的なことでどうにかするんじゃなくて、具体的な行動などにした方が効率的で自分にも優しいんじゃないか、と。
ここ数年、そんなことを考えるようになりました。
明日も、今日みたいにいい日になりますように。自分に残された日々がうんざりするほど長いのか、驚くほど短いのかは誰にも分からないけれど、いい日が1日でも多くありますように。自分や自分のまわりの人たちが、怖い思いやみじめな思いをしませんように。そのためにできそうなことがあれば、がんばります。無理のない範囲で。
メレ山メレ子「メメントモリ・ジャーニー」
p259「孤独を乗りこなす力、ささやかなお祈り」
自分の人生も、後半戦に入りました。本当に無理をせず、いい日がちょっとでも多くなるように生きて行けたらいいな。
来年も、たくさんの言葉に出会えますように。
2016年「使ってよかった」と思ったもの
今年新たに使い出したもので、「よかったな」と思ったものをご紹介します。
無印良品「体にフィットするソファ」
家族だけでなく、ゲストにも好評です。
座り心地がよく、姿勢に合わせて変形できて、持ち運べるので掃除も楽。リビングの古いソファをこれに換えたのですが、正解でした。
2つくっつけて並べると、わたしはそのまま上に横になれます。なのでその状態で昼寝することも。
体にフィットするソファ・本体 幅65×奥行65×高さ43cm | 無印良品ネットストア
ロール型付箋紙
異動先で前任者がそのまま机に残していった物です。気がついたらこればっかり使ってました。
主に案件の進捗状況やtodoの記録に使っています。例えば「A社の返答待ち」とか「○○を改訂して部長承認をもらう」とか書いてファイルの表紙に貼ってます。
普通の付箋紙のようにひらひらしないので、ファイルの表紙にも気にせず貼れるのがいい。
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Brilliant more
歯科医院で勧められた歯磨き粉。わたしは歯に着色汚れがつきやすいのですが、これを使い出して悩みがほぼなくなりました。
ちなみに歯石取りの最中にこれを勧められました。
歯科医が歯石を削りながら
今度うちで扱いだした歯磨き粉ね、着色汚れがよく取れていいよ
汚れを浮かせて落とすから、研磨剤で削るのより優しいし
着色汚れを取る歯磨き粉、1000円のやつと2000円のやつを自分で試したんだけどさ
やっぱり2000円の方が汚れがよく落ちるんだよ
だけどさ、俺は歯磨き粉に2000円はよう払わん、と思ってさ
1000円のを扱うことにしたんだよ
気になったら使って感想教えて
と言いました。当然まともな返答はできませんでした
2000円の歯磨き粉がどんなものかは不明ですが、これはよかった。ちゃんと歯科医にも報告しました
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珪藻土バスマットを水切り籠の受け皿として使う
洗った食器を置く水切り籠を新しくしたのですが、専用のトレーを使わず珪藻土のバスマットを下に敷きました。
なぜかというと、専用トレイでは自分が望む方向に水を流せなかったから。そこで悩むくらいなら、いっそ流さないようにしよう、と考えたのです。
最初の数日だけ珪藻土独特のにおいが気になりましたが、現在では快適に使ってます。食器を片付けたあとにまな板スタンドに立てて乾燥させています。
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2016年も、たくさん映画を見たので
今年は昨日までに27本の映画を見ました。2015年は25本でした。ずいぶん見たもんですね。
その中で特に印象的だったものをご紹介します。
ヤクザと憲法
映画『ヤクザと憲法』公式サイト
平日昼間に行ったのに、名古屋シネマテークは補助椅子を全部出した上に立ち見まで出ていました。定員の倍はいたんじゃなかろうか。
しかも普段映画なんか見ないであろう雰囲気な人が多かった。
わたしはヤクザは嫌いだし、世の中からいなくなった方がいいと思っています。しかし彼らには彼らの言い分もあるわけで。
映画の中のヤクザは、自分が持っていたイメージとは違う面が多かったように感じます。一番印象的だったのは高校卒業後すぐにこの世界に飛び込んだ、組の一番下である20歳前後の男性。ヤクザの世界に入ったこと、この世界で生きていくことに対する迷いのなさが強烈でした。
帰ってきたヒトラー
原作を読んだあと、こんなツイートをしました。Twitter文学賞に投票した時のものです。
Twitter文学賞海外部門。ティムール=ヴェルメシュ著・森内薫訳「帰ってきたヒトラー」河出書房新社。2014年これに勝る衝撃はなかった #wtb5 #fb
— 小波(sazanami) (@sazanami_jp) 2015年2月4日
映画に関しても、全く同じことを言えます。2016年これに勝る衝撃はなかった。
なによりこれだけリアルに、小説の持つおかしさや不気味さを表現できたとは。一部ドキュメンタリーであるからこそのリアルさですね。映画内での原作本の使い方も、「こうきたか」とニヤリとするものでした。
ヒトラー役の俳優は特殊メイクであの顔になりましたが、単なる「似ている人」じゃないんですよね。ヒトラー本人も、こんな感じだったんだろうと納得させられてしまいました。
映画と小説ではラストが違っています。しかし、最後の最後で「んなバカな」という衝撃を受けた点は同じ。
「帰ってきたヒトラー」は、小説と映画両方見るべき。小説の世界をこれだけ上手に映像にした作品は、そうはないと思います。
キャロル
映画『キャロル』公式サイト
実に美しい恋愛映画だった。「女性同士の恋愛」を扱った作品で、上映前から話題になっていましたが、女性同士であることは、途中からどうでもいいことに思えました。映像も音楽も、何もかもが美しい。
父を探して
映画『父を探して』公式ホームページ
手描きとパターン展開を多用した、楽しい映像と楽しくないストーリー展開が印象的でした。終盤の主人公の少年の変化に驚き。
CGによるリアルなアニメーションばかりになった今、手描きのタッチはとても鮮烈でした。
今年はついに、スターキャットシネクラブの会員になってしまいました。
せっかくなので、来年も見たい作品はできるだけ見に行きます。
今年読んで、強く印象に残った本 #mybooks2016
今年は昨日までに63冊の本を読みました。
その中から特に印象的だったものをご紹介します。
温又柔『台湾生まれ 日本語育ち』
「自分自身」「ことば」「国」の関わりについて、全く新しい視点で綴られた本。
自分の生まれた国で育ち暮らし、自分の国の言葉だけを話す生活をしていると、この3つは直接結びついているものと考えがちですが、それは当たり前じゃない。
ことばと人との関わりは、本当はもっと複雑ですごいものなんだと実感させられました。まさに「蒙を啓かれた」という感じです。
米原万里『米原万里ベストエッセイ(I)(II)』
池澤夏樹がIの解説に「つくづくこの人にはかなわないと思う」と書いていましたが、全く同感です。
彼女のエッセイをまともに読んだのは初めてですが、確かにこれだけ毒舌や下ネタを出しても下品にならず、知性あふれる痛快なエッセイを書ける人にはかなわない。
彼女の文章、もっと読んでみようと思います。
KADOKAWA/角川学芸出版 (2016-04-23)
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KADOKAWA/角川学芸出版 (2016-04-23)
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モリー=グプティル=マニング『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』
本の持つ力を、強くストレートに実感させてくれました。
第二次大戦中、アメリカ軍は前線の兵士たちに1億4000万冊もの本を送ったそうです。「兵隊文庫」と呼ばれたその本たちを兵士たちはとても大事にし、時間さえあればむさぼるように読んだそうです。
悲惨な戦闘の中でも、兵士たちは本を読むことで「自分は人間である」という実感を取り戻していたのです。
そして本を読むことを覚えた兵士たちは、復員後に大学に通うなどして教養や職を得るようになったそうです。兵隊文庫は、市民の教養の底上げにもつながりました。
訳者あとがきには
本は武器であるという言葉は、決しておおげさな言葉ではないと思う。ヒトラーは無類の読書家だったそうだ。おそらく彼は、本の力をよく知っていたのだろう。だからこそ、一億冊もの本を燃やしたのではないか。そして、アメリカの図書館員や戦時図書審議会構成員もまた、本の力を知っていた。だからこそ、一億四千万冊もの本を戦場へ送ったのである。
とあります。
本の力を知っている両者が、正反対の行動に出たというのが非常に興味深い。
東京創元社
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チママンダ=ンゴズィ=アディーチェ『アメリカーナ』
2段組で500ページ以上ある小説ですが、読み出したら止まらない。
恋愛がベースでありながら、全体を通してアメリカ社会への批評が展開されます。
アメリカ社会で移民・女性・黒人が生きるとはどういうことか、アフリカからアメリカに渡った人と、アフリカに残った人との間にあるものとは。
主人公のイフェメルが、アメリカに来て、初めて自分が黒人であることを発見したという箇所が衝撃でした。
まずラブストーリーにどっぷりはまり、そしてアディーチェの社会批評の鋭さに驚嘆する。
アメリカは移民社会と言われるけど、だからこそ抱える複雑さがあるのですね。
河出書房新社
売り上げランキング: 64,364
来年も、いい本にたくさん出会えますように。
死にたくないから生きている、生きていたいから生きている、それで十分じゃないの
死にたくないから生きている、生きていたいから生きている、それで十分じゃないの
数年前に亡くなった伯母の言葉です。
これを聞いたのは大学生の時。当時伯母は50代前半でした。
その頃のわたしは体調は崩すわ勉強に行き詰まるわ人間関係は上手くいかないわで、常にどす黒いオーラを発していたんじゃなかろうか。
そんな時、久しぶりに会った伯母につい色々と愚痴ったのですが、それに対する返答が冒頭の言葉です。
当時のわたしは、この言葉が非常に納得がいかなかった。「ただ生きているだけなんて無意味では」と思ったのは、やはり若かったからでしょう。
今年に入って知人の訃報が続けて入ってきたり、体調を崩して長期療養を余儀なくされる同僚が複数出たことが重なり、改めてこの言葉を思い出しました。
大げさだけど、どんなにしんどい時であっても「今日1日をちゃんと生きよう」という気持ちだけは失わないようにしたい。
今年出会った「忘れないでおきたい言葉」
今年も本やWebを通して、様々な言葉に出会いました。
「これは忘れないでおきたい」と思ったものをご紹介します。
言葉は今現在を躍動させるためにある。
武田砂鉄『紋切型社会——言葉で固まる現代を解きほぐす』p281「誰がハッピーになるのですか?」
今一番気になる書き手、武田砂鉄さん。
「紋切型社会——言葉で固まる現代を解きほぐす」で取り上げられた言葉は、よく聞く言葉ではあるけれど、躍動からはほど遠いものが多い。
自分自身が停滞してしまわないためにも、言葉と向き合う・言葉の背景について考える習慣を身につけられたらと思います。
「本の近くにいるといいことがあるんですよね」
帰ってきた炎の営業日誌「11月24日(火)」
ミシマ社の営業ワタナベさんの言葉です。
実にシンプルだけど、本に対する愛情がひしひしと伝わってくる。
これを聞いた、本の雑誌社の営業杉江さんの
確かに言われてみれば、本の近くにいるといいことがある。私がここまでどうにかこうにか生きてこられたのも、間違いなく本の近くにいたからだろう。
これも本好きなら、大きくうなずくことでしょう。
確かに、本の近くにいて嫌なことがあったなんて一度もない。
これからも、本から離れずに生きていきたい。
「自分の老化」という経験を観察するのはなんだかおもしろいし、老化とつきあうためにあれこれ「工夫」するのも意外と楽しいものである。ともかく自分の体という「ありもの」で生きていくしかないので、だましだまし過ごせばいいと思っているのだ。
小町拝見「経験共有 更年期の友…深澤真紀」
40代も半ばになり、いよいよ老化が身近になってきました。
老化への向き合い方は人それぞれだと思いますが、わたしはこの言葉のように接していきたいな、と思います。
過去に病気で辛い思いをした経験もあるので、今の自分でうまく生きていく方法を考えるのが、心身ともにしんどくならずに済みそうです。
「自分と他人を、どう見逃すかが大事だ」ということ。やっぱり人間は一人一変態、一人一派だから、完全な共感とか理解をするのは不可能でしょう。そこで大事になるのは「適度に見逃す」っていうことだよなと。
女オンチな女たち「人類みな『変態』である–vol.6」
続けて深澤真紀さんの言葉です。
前出の言葉は「対自分の老化」、こちらは主に「対他人」で自分をすり減らさないためですね。
他人に対していらいらすることは多いけれど、自分の思い通りにすることなど不可能なのだから、できないことで悩むのはやめていかないと。
もちろん自分自身だって思い通りにならない。そこも受け入れていかないとだめですね。
この「女オンチな女たち」という対談、非常によかった。今年目にしたWebコンテンツではダントツだったと思う。
「『女』をめぐる諸問題」がテーマなのですが、年齢性別問わずおすすめします。
男女関係なく「自分自身のありかた」を考える上で、非常に示唆に富む内容です。
「自分に自信を持とう」「自分を好きになろう」と、いろいろな自己啓発本に書いてあるが、なかなかすんなりとできるものではない。それならば、自分の強いと思えるところを「美しい」に変えて自分を認めてあげるほうが簡単だ。自分は、もしかしたら自分が思っているよりもずっと「強い」のかもしれない。
サイゾーウーマン「『かわいい』『女子』ブームが本格的に終焉、美容界の向かう『強さと美しさ』の潮流」
「あ〜なるほど」と思った言葉。
「自分に自信を持とう」「自分を好きになろう」って確かにその通りなのですが、そう言われてもねぇ、と思ってしまうのも事実。
でもここでちょっと視点や基準を変えれば、自分自身の思わぬ一面に出会いやすくなるかも。
決まり文句にとらわれる必要はありませんものね。
来年も、たくさんの言葉に出会う機会があるといいな。
朝日出版社
売り上げランキング: 7,016
今年出会った、とても印象的な本について
今年は今日までに75冊の本を読みました。昨年読んだのが63冊だったので、だいぶ多いですね。
その中から特に印象的だったものをご紹介します。
武田砂鉄『紋切型社会——言葉で固まる現代を解きほぐす』
世の中には言葉があふれているけど、自分になじむ物ばかりではありません。聞いて「?」がともる言葉もある。そんな言葉の裏側にあるものを見せてくれる本。
「?」を感じる力を持ち続けること、感じるだけでなくきちんと対峙する事の大切さがわかります。
非常に気になる書き手、武田砂鉄さん。彼の文章は、今後も追いかけていきたい。
朝日出版社
売り上げランキング: 26,615
岸政彦『断片的なものの社会学』
NHKの「ドキュメント72時間」。毎週録画して見ている唯一の番組です。
この本とは全く無関係なのですが、わたしはどちらにも同じ理由で惹きつけられるのかな、と感じました。
どちらも登場する人々が見せる面は、人生のほんの一瞬に過ぎません。それだけで人を判断するのは危険だけど、でも一瞬だからこそ、その人らしさが非常に強く出るのかもしれません。
「普通の人の一瞬」と、それに誠実に向き合う著者の姿が、じんわりと胸にしみます。
デイヴィッド=フィンケル・古屋美登里訳『帰還兵はなぜ自殺するのか』
読み終わって、非常に気が重くなった本。しかし読んでよかったと思います。
主にイラク戦争に従軍したアメリカ兵を追跡しているのですが、兵士自身もその家族も、軍部も医療関係者も、「帰還後」どうすればいいのか決めあぐねているように感じました。
戦場から帰還しても、後遺症は続く。本人だけでなく、周囲の人も苦悩する。
「戦争の終わり」は非常に曖昧で、場合によってはいつまでも引きずられてしまうことがよくわかる。
この作品は映画になることが決まっています。公開されたら見てみようと思います。
亜紀書房
売り上げランキング: 16,245
開沼博『はじめての福島学』
「『福島難しい・面倒くさい』になってしまったあなたへ」という惹句が付いている本。
東北出身で現在は遠く離れた場所に住むわたしにも、「福島難しい・面倒くさい」という気持ちがどこかにあります。
福島が「特別」になってしまったせいでしょう。この本はその「特別」を引きはがす効果があると思います。
福島の抱える問題の本質は何であるかを、公開されている統計資料等をもとに明らかにし、それらを前にどう考え、何をしていけばよいのかを提示する。
著者が福島で研究・発信し続けているからこその説得力があります。
読んでいて、頭の中の霧が晴れているような感じがありました。
イースト・プレス (2015-03-01)
売り上げランキング: 18,492
マーガレット=ミッチェル・鴻巣友季子訳『風と共に去りぬ 全5巻』
新訳が出たから読んでみるか、という軽い気持ちで手に取ったのですが、驚きの連続でした。
映画も見ていないわたしにとって、この作品のイメージは「すごく気の強い美人が主人公の長編ラブロマンス」だったのですが、全く違っていました。
まずスカーレット。気が強いどころの話じゃない。かなりひどい。ここまでヒール色の強い主人公も珍しいと思う。
わたしは彼女とは絶対に友達になれない。メラニーとも友達になれないと思うけど。
それに思ったほどロマンス要素は強くない。確かにレット=バトラーとの関係はとても重要だけど、それが中心という感じは受けなかった。登場人物としてはメラニーの方がはるかに重要では。
スカーレットはむちゃくちゃで、本当に強い。ひどい人間である一方、とても魅力的。今自分がすべき事だけを考え、他人の目など気にせずにそれをやり続ける。彼女なら、どんな時代がきても絶対に生き抜ける。
わたしは『風と共に去りぬ』は
「時代のうねりに翻弄されながらも、自分だけを頼りに怒濤の人生を生き抜いた女の一代記」
だと思ったし、だからこそ歴史に残るベストセラーになったんだと思いました。
新潮社 (2015-03-28)
売り上げランキング: 129,030
平山夢明『デブを捨てに』
思わずタイトル買いしました。
4つの短編が収められていますが、みんな暴力にあふれているし汚いしきつい。しかし同時に、どうしようもない優しさを感じるのです。ただ暴力的で汚いだけなら、読み通せなかったと思う。
いやあ、結構ひどかった (褒めてます)。
星野智幸『呪文』
なんというか、気持ち悪い小説でした。登場人物が誰も好きになれなかった。しかし、だからこそ読んでよかった。
この小説が持つ気持ち悪さの根源は、人物にせよ現象にせよ現に世の中に存在しているものだと思うから。
来年も、いい本にたくさん出会えるといいな。