カテゴリー: 本の話

[share] 即答するバカ

実に明快なタイトルです。日々生活していて、その場で返答しなければならないこともありますが、それが一刀両断されてしまいました。
しかしその場で返答するにしても、単に反射神経でことばを発していてはしようがないのも確かです。

これは口に出す前の少しの工夫について論じた本ですが、わたしは少し違う面で興味を持ちました。
この本に書かれている「うまく返答するための工夫」が、自分の苦手に効きそうな感じがしたのです。
というのは、わたしは即答がほとんどできないからです。気軽に即答して問題ない軽い会話でも、考えないと答えられないことがあるのです。で、考えたことで相手を慌てさせてしまうこともありました。

なんにしても、受け答えを上手にやる方法を身につけたいものです。

 

即答するバカ (新潮新書)
梶原 しげる
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[share] お引越し

1990年に発売された児童文学「お引越し」が、再版されることになりました。
両親が離婚した、11歳の女子小学生レンコが主人公の、家族をめぐる物語です。
20年ほど前には映画になっています。女優田畑智子のデビュー作でもあります。
わたしは映画は見ているのですが、原作は気になりつつも結局読まずじまいだったことを思い出しました。

今回特に気になるのは、映画で田畑智子が演じたレンコの「あと話」が収録されていることです。これは35歳になったレンコと親友2人の話のようです。
自分が今子供時代を振り返り、新たに思うこと・気づくことが増えているので、35歳のレンコが11歳の経験をどう振り返るのか、気になります。

ところで映画「お引越しの」DVD、えらい値段がついてますな。

 

お引越し (福音館創作童話シリーズ)
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お引越し デラックス版 [DVD]
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[share] 水族館の歴史: 海が室内にやってきた

水族館は楽しい。動物園とはまた違った楽しみがあります。水槽の間でぼんやり立っていると、異世界にいる気分になります。
通路がトンネル状になった、魚を下からのぞける水槽を初めて見たときには非常に驚きました。
現在の水族館は、トンネルだけでなく様々な形の水槽が使われています。それはもちろん技術が進歩したからです。
でも最初の「屋内で魚を長時間生かしたまま観察できる」設備こそが最大の発明であるわけです。

そんな設備が現れたとき、人々は一体どんな反応をしたのか。水族館はどういう歴史をたどってきたのか。気になります。

 

水族館の歴史: 海が室内にやってきた
ベアント ブルンナー
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NHK「ドキュメント72時間 巨大書店・活字の森の歩き方」を見た

中部地方では12月27日に放送された「ドキュメント72時間 巨大書店 活字の森の歩き方」を見ました。

ドキュメント72時間「巨大書店・活字の森の歩き方」 – NHK

舞台は紀伊國屋書店新宿本店。日本で一番新刊が多い (1日約200点が入る) と思われる書店です。蔵書は約120万点だとか。

書店にはいろいろな人がやってきます。3日間を通して様々な人に何を探しているのか、その人のバックグラウンドについて聞いていきます。
ナレーションに

自分を変えてくれる“1冊”はどこにあるのか

とありました。探している物は様々ですが、これが書店を訪れる究極の目的かもしれません。

 

特に印象に残った人と言葉をご紹介します。

開店前にやってきた、高校生の頃から通っている、本屋さんが大好きな57歳男性。「本屋さんに入ったときの匂いとか、開店した手の本屋さんの人の少なさとか、そういうのが好き」だそうです。
開店したての本屋さんに入ることは

私の中では例えば 映画館に座って 辺りが暗くなって さぁ映画が始まるっていう時のワクワク感に似ていますかね

と話します。
「ああ、確かに」と思いました。映画館で周囲が暗くなるときと、書店に入るときの感じはとても似ている。

 

「探しているのは沢山あるんだけどね」という元銀行員の79歳男性。この人の趣味は読書ではなく「買書 (ばいしょ)」。

読むかもしれない 読まないかもしれない 読まない本を買う 買わない本を眺める それが趣味ですね

「趣味は買書です」なんて言ってみたい。

 

そして一番驚いたのが、1年前からミステリーにはまっている、東野圭吾が好きな小学4年・10歳の少年。すでに初の推理小説も執筆済とか。
10歳にして本を見て歩く姿に「本と書店に一家言ある大人」の風格が感じられます。
親子で訪れていたのですが、母親が「気がついたら (自分と) 同じものを読んでいた」「ちょっと前まで 一緒に絵本読んでたのに…」と言っていました。
すごく将来が楽しみです。このまま彼が推理小説への興味を失わなければ。

 

ウィトゲンシュタイン入門」を購入した、哲学を学ぶ女子大学生は

なんでもいいんですけど1冊 自分の1冊っていうのがあったら 自分にとって芯になる

大切な本っていうのは ひとつ持っていた方が 私にとっては強みになると思って

と言っています。

 

番組最後に、紀伊國屋書店の女性店員が「無人島に持って行きたい1冊」としてポール=ヴァレリー「ムッシュー・テスト」を紹介しました。
その本は今、こういう状態になっているそうです。

 

そして2014年の日めくりカレンダーを買った、85歳無職男性の言葉。

さびしい通り越して もう生きているの嫌だけどさ しょうがないじゃん 死ぬわけにいかねぇし 生きてるんだから 毎日はな

投げやりにも聞こえる言葉ですが、不思議と励まされる感じがしました。

 

なぜ書店に来たのか、なぜ本を探しているのか、なぜそれを選んだのか。
これらを人に聞く機会はなかなかありません。本とそれを手に取る人の後ろに広がる世界を感じられて、面白かったです。

 

[share] レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史

「スターハウス」ってなんだ? と思ったのですが、星形というかY字型の団地のことなんですね。
スターハウスを初めて見たのは学生時代。当時住んでいた町に大きな団地があり、そこに建っていました。大学卒業前に再開発が始まったので、今はもうありません。
平針住宅にもスターハウスがありました。見たのが数年前なので、現存するかどうかはわかりません。

わたしは東北の小さな町で生まれ育ちました。市営住宅もありましたが、実家からかなり遠いところだったのと、小規模で団地を形成するほどではなかったのとで、大学生になるまで「団地」とはほぼ無縁でした。
レッドアローにしてもスターハウスにしても、自分には縁遠いものです。地元に似たような物が存在しなかったし、自分がそこに住んでいたり利用したこともないからです。
この本に惹かれたのは、自分とは無縁の世界について書かれているからかもしれません。

 

レッドアローとスターハウス: もうひとつの戦後思想史
原 武史
新潮社
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[share] ウザい相手をサラリとかわす技術 今日から人間関係が必ず上向く!

「この人うざい」という人は、どこに行ってもいます。度を超したうざさは論外ですが、ある程度はかわしていかないと、仕事なんかやってられないのも事実です。
今までいろいろな場で働いてきました。近かったり遠かったり、人間関係は様々です。その中で適度な距離を保つのは、意外と難しいと感じます。
場の距離を分かった上で適切に振る舞うのには、きっとコツがあるのでしょう。この本がそれをつかむヒントになりそうです。
そして、自分自身がうざい存在にならないように気をつけないと。

 

ウザい相手をサラリとかわす技術  今日から人間関係が必ず上向く! (SB新書)
清水 克彦
SBクリエイティブ
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[share] 本を読む人のための書体入門

書体の本というと、本を作る側=デザイナー向けの物がほとんどですが、この本は珍しく読み手向けです。
確かにどんな書体が使われているかで、文章の持つ印象が変わってくることがあります。作り手はそこを意識して書体を選んでいると思います。

普段本を読むときには、書体まで意識することはほとんどありません。装丁に比べれば地味だからかもしれません。
でも文字を深く味わうことで、本を読むことがもっと好きになるなんて、楽しそう。

 

本を読む人のための書体入門 (星海社新書)
正木 香子
講談社
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《気になる》活版印刷の本 凸凹感と活字を楽しむ かわいい活版印刷のデザイン帖

活版印刷の本は字が読みやすくて好きです。印刷時に文字の中心に近いところはインクが少なく、周囲が多くなるので、文字に濃淡が出て読みやすくなるんだそうです。
たまに活版印刷機がほしくなります。「買ってどうする」って感じですが、まずはインテリアとして楽しみ、時々印刷をして楽しんでみたいのです。実際に持てば、使わなくても維持管理に手がかかるとは思いますが、コンピュータで書いた文字にはない味があるのは確かです。
印刷機を買うのは難しそうなので、この本で印刷機そのものや印刷物を眺めて楽しみたいです。

 

活版印刷の本  凸凹感と活字を楽しむ かわいい活版印刷のデザイン帖
手紙社
グラフィック社
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《気になる》「要領がいい」と言われる人の、仕事と勉強を両立させる時間術

「要領がいい」という言葉は、いい意味でも悪い意味でも使われます。要領がいい方が得をしたりよりよい結果に結びつきやすいのは確かですね。特にきっちり結果を出したいことは、要領よくやるに越したことはありません。
しかしわたしは要領が悪いので「要領よくやる」といっても、どうしたらいいのかピンときません。うまくやるためのテクニックはいろいろありますが、「要領がいい」というのはそれ以前の話のような気もします。
この本は勉強と仕事を両立するための方法を紹介しています。うまく時間術を身につけられれば、何か勉強をしたいときだけでなく、普段の仕事にもプラスになりそうです。

 

「要領がいい」と言われる人の、仕事と勉強を両立させる時間術
佐藤 孝幸
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
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2013年「読んでよかった」と思った本 #10book2013

のんびり本を読んだ1年が終わります。今年読んで「よかったな」と思った本をご紹介します。

 

小山田浩子「工場」
仕事と会社とそこにいる人々の不条理をうまく描いていて面白い。奇妙なリアリティがあって、読んでいて感じる落ち着きのなさがいい感じでした。
この本は小山田さんの初めての単行本ですが、次の本も読んでみたい。

工場
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小山田 浩子
新潮社
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ラジスラフ=フクス「火葬人」
チェコスロヴァキアの作家による、グロテスクで怖い小説。一見穏やかなようで、知らないうちに恐怖がひたひたと迫ってくる。
平穏な生活を送る穏健な主人公が、いつの間にか恐ろしいことをしでかしてしまう。
「人間って、簡単に変わってしまうんだ」「人間って怖い」と思い知らされる小説です。

ちなみにこの小説は、チェコスロヴァキアで映画化されています。表紙写真はその一場面です。
映画化されたものの、直後に「プラハの春」等が起きてお蔵入りされてしまい、89年にやっと公開された、という曰く付きです。

火葬人 (東欧の想像力)
火葬人 (東欧の想像力)

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ラジスラフ・フクス
松籟社
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ハウス加賀谷・松本キック「統合失調症がやってきた」
統合失調症の苦しみを書いて、重いながらも「読んでよかった」と思えた本。
統合失調症に限らず、しんどい思いをしている人に、読んでもらいたい本です。

読書記録はこちら

統合失調症がやってきた
ハウス加賀谷 松本キック
イースト・プレス
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津村記久子・深澤真紀「ダメをみがく: “女子”の呪いを解く方法」
ある程度の年齢になった自分がこの先どう生きていけばよいか、のヒントになった本。
自分をできるだけすり減らさないようにするためにも、「ありもので生きる」姿勢は忘れないように、そして「呪い」から少しでも解放されるようにしたい。

タイトルに「女子」とありますが、男女そして年齢問わずに読んでもらいたい本。「生き方」に悩む人に勧めたいです。

ダメをみがく: “女子”の呪いを解く方法
津村 記久子 深澤 真紀
紀伊國屋書店
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高野秀行「謎の独立国家ソマリランド」
ソマリアという、縁遠い国の中にある「独立国家」ソマリランド。
「ソマリア=海賊」という考えがいかに単純かわかりました。もちろん海賊の話も出てきますが、自分の想像を超えていました。
文字通り未知の世界が目の前に展開し、その驚きに読むのがやめられません。

「国ってなんだ」と考えさられました。

謎の独立国家ソマリランド
高野 秀行
本の雑誌社
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パコ=ロカ「皺」
昨年末テレビでアニメを見、今年に入ってから原作漫画を読んで、アニメは映画館にも見に行きました。
これはぜひ両方を見てほしい。ラストが違うから、というのもありますが、漫画ならではの表現、アニメならではの表現を楽しめるからです。どちらもとてもいい。
本には「皺」と「灯台」の2編が収録されています。かなり雰囲気が違いますが、どちらもいい作品です。

皺 (ShoPro Books)
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パコ・ロカ
小学館集英社プロダクション
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しわ [DVD]
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スタジオジブリ (2013-11-06)
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来年も、楽しい本に出会えるといいな。