投稿者: sazanami

《書評》ごつごつした水晶の原石のような〜芥川龍之介[ちくま日本文学002]

思えば芥川龍之介も、教科書や副読本以外ではほとんど読んだことがありませんでした。はっきり読んだ記憶があるのは「トロッコ」くらい。
むしろ自分にとっては、「百間先生邂逅百間先生図」や「百間先生懼菊花図」の作者としてのイメージが強い (それはそれでどうかと思う)。
毎日就寝前に少しずつ読んでいたので、読了まで1ヶ月ほどかかってしまった。
彼が俳句を作っていたのは知っていましたが、詩も作っていたことはこの文庫を読んで初めて知りました。

同じシリーズの志賀直哉を読んだときは、文章は薄くて鋭利な刃物みたいだと思いましたが、芥川龍之介の文章は、ごつごつした水晶の原石みたいでした。硬くて鋭さを内側に隠し持っていながら、表面にそれは表れていない。物語世界にどっぶりとはまり込んでも、どこかで弾かれる感じがする。
今回読んだ中で一番気に入ったのは「蜜柑」という7ページほどの作品です。収録された他の作品と比べても、やや毛色が違う感じがする作品ですが、最後に「なんだか救われた感じ」がしたので。
「地獄変」は、恐ろしいと思いつつも読むのをやめられない、怖いけど目をそらせない、そんな感じで読んでしまいました。

あともう一つ。「杜子春」で、終盤で鬼にむち打たれた母が、杜子春に向かって「心配をおしでない。私たちはどうなっても、お前さえ仕合せになれるのなら…」と語りかける場面がありますが、もしここで母が杜子春を恨む言葉を口にしたら、いったい物語はどうなったのだろう。それが気になった。この展開の話を読んでみたかった気がする。

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モレスキンに直接ペンをぶら下げるハック (追記あり)

「ハック」などと大げさな言葉を使ってしまいました。

もともとは虹の父さんの「RHODIA #11とゼブラ ペンポッドの組み合わせ方」 というエントリで見たのがきっかけです。ここでペンポッドという便利なものを見つけ、自分も使ってみようと購入しました。

まず自分が使ってるメモ帳にぶら下げてみました。@kazumotoさんの方法の改良版です。

ぶら下げるために用意したもの

  • ハトメ (手芸用)
  • ハンマー (ホームセンターで500円)
  • かまぼこの板 (うさぎにかじらせるために保存していたもの)

ハトメ・ハンマー・かまぼこの板

やり方は至って簡単。穴開けてハトメつけてペンポッドを下げだけ。
メモ帳の表紙、ハトメのない穴は位置を間違えて開けてしまったものですw

無印良品のメモ帳にペンポッドをぶら下げる

これは無印良品の「再生紙 表紙が360°折り返せるメモ A8」 です。RHODIAは罫線の色が強く、しかも紙が白すぎて好かない。デミクーパーも、自分にはちょっと罫線が強すぎると思うのです。

つぎに、ペンポッドを直接モレスキンにぶら下げることとしました。やり方はメモ帳と全く同じ。これまでは背表紙にシャープペンを差していたので、だいぶすっきりしました。

モレスキンにペンがぶら下がった

ペンをゴムバンドで押さえる

本当はボールペンじゃなくて、シャープペンをぶら下げたい。
それはともかく、ヒントをくださった虹の父さん、kazumotoさん、ありがとうございます。

2010/06/29 20:59 追記

このエントリを、モレスキナリーさんで取り上げていただきました! ありがとうございます!

また、「モレスキンに直接ペンをぶら下げるハック・シャープペンシル編」もやってみました

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第1回西三河朝会が終了しました #mikawaasa

6月12日、第1回西三河朝会を行いました
正直参加してくださる方がいるだろうかと思いましたが、5名の方に参加いただきました。

読書会の主催も進行も全く初めてで、正直どうなることやらと思いましたが、無事終了しました。至らない点もあったかと思いますが、参加者の皆様、本当にありがとうございます。
また、開催までの間にアドバイスくださった方、twitterでの告知をリツイートしてくださった方々にもお礼申し上げます。

最初は全くの思いつきで始めた会ですが、継続していけるようがんばります。

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《メモ》わかっちゃいるけどむずかしい〜人はなぜお金で失敗するのか

Amazonマーケットプレイスで古本を購入

行動経済学の入門書です。
人はなぜ無駄遣いしてしまうか、がわかりやすい文章と例示で示されています。アメリカに住む人向けの内容で日本の事情には合わない面もあるけれど、それでも基本の部分はお金の使い方を考える上で役に立つと思います。

この本には投資に関する話がたくさん出てくる。自分は「ウォール街のランダム・ウォーカー」とか「敗者のゲーム」などは読んだことがあるけど、実際に投資はしていないのでピンとこないところもあった。しかし、何かにお金を使うことを広義の「投資」と考えれば、納得いく点も多い。

自分にとって一番役立ったのは「心の会計」の章。あるお金を他のお金よりも価値の低いものとみなし、無駄遣いしてしまう傾向について論じた章。
自分は「小さな買い物をたくさんしてしまって結局お金が手元に残らない」傾向があるのだけど、これについては
「多くの人々が…大きい買い物をするときには費用に敏感なのに、小さい買い物をするときには、「心の会計」のために自制心をゆるめてしまう。」「小さい買い物の費用に敏感になれば、多額の貯金ができることが多い」とあって、その通りだよなあ、と。
各章には「どう考え、どう行動するか」として、自分がお金に関してよくない行動にとらわれていないかのチェックと、具体的な行動の提案があります。正直「これが全部できれば苦労はないよ」とミもフタもないことを思ってしまったり、この本を読んでいるときは冷静に得な方を選べるけど、いざ自分がお金を使う段になるとちゃんと選択できないかも、と思ってしまった。でもプロローグにあったように「最高の薬は知識」であるのも確か。全部は無理にしても、自分がお金を使おうとする場面で、少しでもよい選択をできるように心がけることはできるはず。

行動の提案の中から自分がこれから気をつけようと思ったことは

  • すべての収入を働いて稼いだものだと想像する、あらゆるお金を同じように扱う (先日も臨時収入をぽっと使ってしまいそうになったし)
  • 給与天引きをうまく使う (今でもやってるけど、金額を増やしてみようか)

の2つ。あとは日々の細かい出費に対する意識をもう少し持つべきか。ひたすらケチになったり、ひたすら倹約するつもりはないけれど、お金を使うときに「これは本当に今必要か?」を考えるようにしたい

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「勝つに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

先日購入した地元情報誌のコラムを読んでいたら、最後に

「勝つに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

が引用されていました。これは野球の野村監督がよく使う言葉ですが、もともとは江戸中期の肥前国平戸藩の藩主、松浦(まつら)静山の言葉らしいです。
これを読んで、大学の試験の話を思い出しました。
どちらも自分が受けた試験ではありませんが、先生から直接聞いた話です。
どちらも理工学部の一般教養での話です。

倫理学の先生が、期末試験で「勝つに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」について論じろ、という問題を出したそうです。
すると答案に

「俺は野村なんか大嫌いだ、だからこんな言葉についてなんか論じたくない」

と書いてきた学生がいたそうです。先生は点をあげたそうです。

自分はビジネス雑誌などを読んでいて、「成功した人の言葉って役に立つのか?」と思ってしまうことがあります。そんな話を先生にしたときに返ってきたのが、この松浦静山の言葉と、試験の話でした。

もう1つ、これは哲学の試験の話。
期末試験で「アキレスと亀」のパラドックスについて論じろ、と出題したところ

亀は気まぐれだからまっすぐ進まず、立ち止まったり逆走したりするから、この試行はランダム性が高い

という趣旨のことを書いてきた学生がいたそうです。先生は点数をあげたそうです。

余談

松浦静山は名画日本史—イメージの1000年王国をゆく〈1巻〉によると、京都で松浦屏風 (大和文華館所蔵) を入手した人のようです。大和文華館は現在リニューアル中で、今秋にこの屏風が公開されるようなので見に行きたいと思っています。

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海亀のスープ

高校生のための文章読本」に、イサク=ディネーセンの「イグアナ」という文章が収録されています。出典は「アフリカの日々 (ディネーセン・コレクション 1)」。
この本をAmazonでチェックしたとき、「バベットの晩餐会」が彼女の作品であることを知りました。映画のバベットの晩餐会は、10年ほど前にビデオで見ています。中沢新一の本 (タイトル失念。エッセイ集?だったと思う。「YELLOWS」についても触れられていた) で取り上げられていて、それをきっかけに見たのです。とても美しく、いい映画だった記憶があります。

さて、「バベットの晩餐会」で反射的に思い出したのが「海亀のスープ」。海亀をスープにすることはこの映画で知りました。そして思いつきで「海亀のスープ」で検索したところ、そのものずばり「海亀のスープ」 というゲームがあること、「世にも奇妙な物語」 にも同名のドラマがあることを知りました。バベットの晩餐会とはかけ離れた世界だけど、これはこれで面白そうだ。

「アフリカの日々」も「バベットの晩餐会」も、読みたい本リストに入りました。せめてどちらかは今年中に読みたい。

アフリカの日々 (ディネーセン・コレクション 1)
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バベットの晩餐会 (ちくま文庫)
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「名古屋ライフハック研究会VOL8」参加してきました #nagohack

名古屋ライフハック研究会に参加してきました。今回のゲストスピーカーは美崎栄一郎さん。
実は今回の研究会に参加するまで、美崎さんの本を読んだことはありませんでしたが、これを機に「「結果を出す人」はノートに何を書いているのか」を読んでみました。当日、本にサインをいただきました。ありがとうございます。

読後感は、共感できたこととピンとこなかったことがない交ぜになった感じでした。
共感できたのは具体的なノートや文房具の使い方など。非常に面白かったし、これは自分でもやってみようというものがあったので。「A書評」も、目的がある読書の場合、変に気負わなくてできそうだと思ったのでやってみます (しかしわたしは、そもそも「目的がある読書」をほとんどしていないな)。
ピンとこなかったのは、具体的な仕事術の部分です。これは美崎さんと自分の仕事の違いによるところが大きいと思います。なので「今の自分の仕事だと、このやり方はあてはまらないなぁ」とは思いましたが、同時に「このやり方はきっとどこかで役に立つかも」と思いました。
実際、仕事ではありませんが自分で朝会を企画したことで、朝会運営にここで読んだノート術は役に立ちそうです。早速母艦ノートとメモノートを買ってこねば。

研究会で美崎さんのお話を聞いて、印象に残ったキーワードをいくつか。

  • チャンスをもらうことが最大の「仕事」
  • ノート術は、継続することが最重要、続かなかったら意味がない
  • 目的を意識して書くことが需要、手段は重要ではない
  • 自分の個性は自分が記録しないと伝わらない。記録することで「相手の心に記録する」ことができる、相手の心に記録することでチャンスがもらえる

わたしはこれまで、「記録を取ること」を特に意識してきませんでした。現在も積極的に (or 意識して) 何かの記録を取ることは少ないです。
20歳になったとき、何を思ったか突然日記を書き始めて、30歳になる前日まで続けましたが、30歳になって最初の燃えるごみの日に10年分の日記を出してしまいました。このときに20代にずっと気になった言葉を抜き書きしていたノートも捨ててしまったのですよ。日記は全く惜しくないが、このノートは捨てるべきではなかった。20代の自分は本当に暗かったので、書いてある言葉も、読むだけで気持ちが沈むようなことばかりでしたが(^^;

それはともかく、自分が記録を積極的に取らないのは、記録の効用にどこか懐疑的だからだと思う。記録を取っておかなかったことを惜しいと思いつつも、どこかで「記録を取ってどうするの」と思っているような。
おそらく記録取ろうと考えると、変に気負ってしまうからでしょう。もっと気楽に、いろんなことの記録を取ってみればいいのかな。

懇親会では、初めてiPadを見て触りました。1次会終了後、ビルの前でみんなでiPadをみんなで囲んでいじったのですが、全然関係ない若いカップルが、その輪の後ろからiPadをのぞき込んでおりました。

美崎さん、名古屋ライフハック研究会の皆さん、ありがとうございました。
またよろしくお願いします。

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第1回西三河朝会の課題本について #mikawaasa

第1回西三河朝会の課題本は「高校生のための文章読本」です。読書会はいろいろありますが、あまり取り上げられないタイプの本のように感じます。
なぜこの本を選んだかについて少し書きます。

そもそもこの本は、自分が高校生の時に学校の図書館で借りて読んだ本です。内容についてははっきりとした記憶は残っていません。ただ、この本を読んで結構楽しかった記憶と、村上春樹を読んだのが人生でこの本だけである、という事実だけが残っています。
それから約20年、先日この本をジュンク堂だったかの棚で発見し、「まだ売ってたのか!」と驚きと懐かしさが。そのときは購入しなかったのですが、もう一度読んでみたくなったのですよ。

この本の話を@shinomeiにしたところ、「それで読書会やると楽しいんじゃない?」と。最初は読書会の課題にするつもりはなかったのですが、確かに楽しそうだと思い、取り上げることとしました。
今読書会に向けて読み進めていますが、やはり楽しいです。高校生向けの本ですが、大人でも十分楽しめます。この本はこうやってまた巡りあえてよかった。

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西三河朝会を開催します

西三河にて、土曜早朝朝会を開催したいと思います。会のコンセプトについては西三河朝会ブログの「西三河朝会を始めます」をご覧ください。

第1回を6月12日に開催します。詳細はこちらをご覧ください。お申し込みはこくちーずからお願いします。

これまで勉強会の類は参加するばかりで企画するのは初めてですが、楽しく有意義な会にできるようがんばります。

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楽しくなかったけど、読んでよかった〜グズの人にはわけがある

ここでいう「グズ人間」とは、「先のばし癖」のある人のことです。先のばし癖があると、他人に迷惑がかかるだけでなく、自分自身も追い込まれてしまい、いいことは何もありません。

この本では、6つにタイプ分けされています。

    • 完璧主義者タイプ「でも、完璧にしたい!」
      夢想家タイプ「でも、あんな面倒なことをするのは嫌だ!」
      心配性タイプ「でも、変わるのが怖い!」
      反抗者タイプ「でも、なぜ私がしなければならないんだ?」
      危機好きタイプ「でも、ギリギリまでやる気になれない!」
      抱えこみタイプ「でも、ほかにすることが多すぎて!」
  • これらのタイプそれぞれについて、どういう点が問題か、実際の症例、考え方・話し方・行動様式のそれぞれに対する先のばし癖克服法の提案からなっています。

    各タイプの説明に入る前に「グズ人間度自己評価テスト」があります。このテストで自分がどのタイプかを判断するのですが、1つにしか当てはまらない人はまれで、たいていはいくつかが独自に混合された性格を持っています。
    各タイプ20点満点で、10点以上になったタイプが「主要タイプ」、9点以下が「副次タイプ」とされているのですが…。
    わたしの場合、危機好きタイプ以外のすべてが10点を超えてしまいましたorz
    もちろん1つのテスト結果に縛られる必要はないし、この結果が絶対だとも思いません。しかし、結果が突拍子もないものだとは思えなかったし、それぞれ心当たりはあったので、自分自身をある程度は言い当てていると思います。

    実際読み進めて非常に困ってしまいました。自分のグズさを、具体的にこれでもかと見せつけられた気がしたからです。しかもその例が、心当たりがあるものばかりだったからです。
    なので読んでいて全く楽しくありませんでした。しかし読んでよかったと思います。
    自分のどういう面がグズなのかが具体的になったこと、それらの解決のためのヒントが見えてきたことは収穫でした。
    これまでの自分の「グスさ」が、何かが絡み合って丸まっている、しかも何が絡まっているか全くわからない状態だったとすると、この本を読んむことで、何が絡みあっているかはわかる状態になれたかなと思います。
    もちろん問題はこれから先どうするか、なんですが。グズを克服=長年染みついた行動や思考を強制するのは容易なことではないでしょう。色々からみついた状態では余計に。

    この本を読んだきっかけはいくつかあるのだけど、結局は自分がグズだという自覚があること、グズを克服しない限り、何をやってもうまくいかないし、自分にも自信が持てないだろうことに、遅ればせながら自分が気がついたことが一番の動機だと思う。
    例えば仕事でなかなかうまくいかない自分がいて、それはスキルとかキャリアの問題だとずっと思ってました。確かにそれも問題ではあるのだけど、もっと根本に問題があるのではないか、と。この年になるまでそれに気がつかなかったてのも情けないけど。
    現在この本を1度通読したところなのですが、この本は何度か読み返し、一つ一つの克服法をやってみる必要があると思いました。

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