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《気になる》火葬人
先日、シュテファン=ツヴァイク「昨日の世界」を読みました。ツヴァイクの自伝であり、20世紀初頭から第二次世界大戦勃発くらいまでのヨーロッパ文化史とも言える作品です。
読みながら、この時代のヨーロッパが舞台の作品をもう少し読んでみたいなと思った直後にこの「火葬人」を知りました。いいタイミングで存在を知った本は過去の経験から「当たり」の確率が高いので、じっくり読んでみたいです。
この「火葬人」は映画にもなっているそうです。今後日本で見る機会があるかどうかわかりませんし、恐怖小説は大丈夫でも恐怖映画は苦手なのですが、機会が巡ってきたら見てみたいです。
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《気になる》ぼくは覚えている
「ぼくは覚えている」。たったこれだけの言葉なのに妙に胸に刺さりました。どんなことをどんな風に覚えているのか。
記憶は時間が経てば経つほど薄れてしまったり、一種の補正がかかって実際にあったことから乖離してしまったりします。
そういうことがあっても、その記憶はその形をもっているのだから、それを核にして、どんな風にストーリーが展開されるのか。
妙に心がざわつくタイトルです。
著者は美術家です。カバーの絵も著者によるものでしょうか。
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今年もいい本に出会えた〜2012年の5冊
2012年も、いい本に出会いました。今年読んだ本から、特によかった5冊を紹介します。
半分のぼった黄色い太陽
2段組で厚さ3cm超あり、読むのに1ヶ月かかるかと思ったけれど、引き込まれて1週間で読了。「読まされてしまう力」のある小説だと思いました。ビアフラ戦争の悲惨さと壮大なラブストーリーを両立させた、すごい小説です。
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オスカー・ワオの短く凄まじい人生
TRPGやSF、カリブ海の呪い、英語とスペイン語がない交ぜになった、むちゃくちゃ面白い小説でした。家族、友人、色々な人生と歴史が折り重なる、大きなうねりに身を任せる楽しさ。表紙も内容にぴったり。
新潮社
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アライバル
ショーン=タンが日本で広く知られるようになったきっかけの1冊。わたしは洋書で読みました。息をのむほどの絵の美しさ、新天地に到着した人々への視線の優しさ。つらい気持ちをふわりと解いてくれるような絵本です。
屍者の帝国
伊藤計劃の「新作長編」が読めたことと、わずかなプロローグからこれだけの物語を紡ぎ出した円城塔に拍手を送りたい。世界を股にかけた大冒険小説。とても楽しく読めました。
そして可能なら、ぜひ続きを書いてもらいたい。物語の最後で目を開いたフライデーのその後が読みたい。
ナチスのキッチン
第1次大戦後からナチス時代の、ドイツの台所・食事の変遷を追った研究書で、非常に興味深いものでした。台所という場の変遷、食べることの意味の変遷。台所というありふれた場所の持つ意味が、この本を読むことで変わります。「ナチスのキッチン」は、現代日本と無縁な場所ではありません。食に関心がある人はぜひどうぞ。
去年くらいから古典・外国文学・SFを中心に読んでいこうと思い、これらを中心に探してきました。その中でも外国文学の面白さに触れることができた1年だったと思います。
今年はあまり古典を読まなかったので、来年は読むようにしたいです。
《気になる》一人の男が飛行機から飛び降りる
どきっとするタイトルです。「一人の男が飛行機から飛び降りる」とは、いったいどんな状況か。この本は悪夢の再現のような超短編を集めたものですが、確かに自分もタイトルと似たような夢を見たことがあります。
楽しい小説、読んでハッピーになれる小説もいいけれど、それとは真逆のぞわっとくる小説、怖さを感じる小説も好きです。例えば今年読んだ岸本佐知子編訳「居心地の悪い部屋」。これも奇妙さ・怖さ・収まりの悪さなどが満載の、いい感じでぞわっと来る本でした。
「居心地の悪い部屋」は短編集ですが、「一人の男が飛行機から飛び降りる」は超短編集。1〜2ページの作品でいったいどんないったいどんな世界が展開するのか。「リアルでたのしい悪夢」の世界、のぞいてみたいです。
新潮社
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余談
見る夢がモノクロかカラーか、音があるかどうかは人によって違うらしいですね。わたしが見る夢はカラーで音がありません。「こういう音がした」というイメージはあります。ごくまれに夢の中で音がはっきり聞こえることがありますが、そういうときは自分の周囲で実際その音が鳴っているのです。
《気になる》文学の福袋(漱石入り)
収録された書評110本超、厚みがあってまさに大入という感じの本です。国も時空も超えて、総天然色の世界が目の前に開けていきそう。
すてきな書評を読むことは、本訴のものを読むことと同じくらい楽しいことです。文章そのもののよさと、対象の本のよさの両方を味わえるから。
今年97歳になった祖母に「福袋なんか買うな」と小さいころから言われていたせいで、わたしは未だに福袋を買ったことがありません。ちょうど今頃は来年の福袋の話題が出てきますが、「すごいなー、みんな色々考えるなー」と思うだけで、買うところまではいきません。
でもこの福袋はいいですね。読み手にも力が求められそうですが、挑戦してみる価値はありそうです。
《気になる》よちよち文藝部
わたしは国内外問わず、文豪と呼ばれる人が書いた作品をほとんど読んでいません。読まねばとは思うんですけどね。せめてちくま日本文学くらいは全巻読破するべきでしょうが、それもできていない。旧版分を含めても10冊読んでいないはずorz
そんな人間なので、文藝春秋のサイトにあった
日本文学・文豪の故きをテキトーに温ね、新しきを知ったかぶりする
というこの本の紹介文には強く惹かれました。まさに自分のためにあるような本かも(笑)。
エッセイにせよまんがにせよ、作家を紹介するものは楽しいものが多くていいですね。
《気になる》先生と僕 —夏目漱石を囲む人々—
夏目漱石を主人公にしたまんがは過去にもありましたが、4コマ漫画になっていたとは。漱石はいったいどういう風に描かれているんでしょうか。友人・門下生とのあれやこれやが題材になっているようですが、周囲の人もどんな風に描かれているか気になります。特に内田百閒。百閒好きとしては気になる。
嵐山光三郎「文人悪食」で紹介されていたのですが、臨終を迎えた漱石の最後の言葉は「何か喰いたい」だったそうです。そして一匙の葡萄酒を口にして、亡くなったそうです。このエピソードが妙に頭に残っています。
メディアファクトリー (2010-11-22)
《気になる》見えない都市
数日前からリチャード=ブローディガン「アメリカの鱒釣り」を読んでいます。これは訳者 (藤本和子) への興味から読み始めたものです。今1/3ほどを読み進んだところですが、言葉のリズムも文字のリズムもいい、読んでいて気持ちがいい文章です。
本文を読み始める前に、巻末にある柴田元幸「『アメリカの鱒釣り』革命」を読んだら、「(柴田元幸さんにとって)文庫化されるべき外国文学ベスト3」というのがありました。その3作品は「アメリカの鱒釣り (2005年文庫化)」「見えない都市 (2003年文庫化)」「百年の孤独」。わたしはどれも読んでいません。
「見えない都市」は、今年前半に読んだ董啓章「地図集」にも出てきました。「地図集」は「道に迷う楽しみ」を存分に味わえる本でした。
日々本をチェックしていますが、異なる本で同じ作品への言及に出会うことはほとんどないので、これもひとつのきっかけだと思って読んでみようと思います。
河出書房新社
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《気になる》ソーラー
京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞しました。その話題を追いかける中で、この本を知りました。
ノーベル賞受賞後、その名声だけで生きている男性の話です。
ノーベル賞云々は別にして、単純に小説として面白そうだと思いました。この上ない名誉を手に入れた男性がどうなっていくのか。名誉だけで幸せになれるのか。自分は名誉とはまったく縁がありませんが、だからこういう物語に興味がわくのかもしれません。
海外文学で面白そうだなと思う本をチェックすると、新潮クレスト・ブックスの1冊であることが多いです。例えば「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」。これはむちゃくちゃ面白かった。もっと早く読めばよかったと思ったくらいです。
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《気になる》タイムスリップ・コンビナート
先日上京した際、海芝浦駅に行きました。
残念ながら雨がひどく、ホームではなく発車待ちの電車内から景色を眺めてきました。
海と高速道路に橋、そして工場。外には出られないけど、ひらけていて好きな場所です。
横浜に住んでいた頃には、仕事が忙しくなって疲れがたまったときなどによく来ていました。
ここに来ると行き詰まりが消えていく感じがします。
今回海芝浦駅で思い出したのが、この駅が出てくる小説「タイムスリップ・コンビナート」。第111回芥川賞受賞作です。
笙野頼子はこれまで読んだことがなく、そして読む人を選ぶ作家な気はするのですが、こんな妙な場所を取り上げている点はひかれます。
「タイムスリップ・コンビナート」は現在「笙野頼子三冠小説集」に収録されています。